託された希望2
へー、ミレーユさんっていうんだ。
んっ、ウィンコット?
ウィンコットってあの3大魔女の1人に数えられてて白のジュリアと呼ばれていた、スザナ・ジュリアさんの家系の魔族?!
「えっと・・・ミレーユさん、さっきウィンコットって言った?」
「はい、ウィンコットミレーユと言いましたけど何か?」
「ウィンコットってあのスザナ・ジュリアさんの家系だよね?ってことはミレーユさんはジュリアさんの・・・」
「ジュリアは私の姉です。とは言っても、私は幼い頃にウィンコット家に養女として引き取られたので血の繋がりはありません」
「じゃあ義理のお姉さんだったんだ」
義理とはいえジュリアさんに妹がいたなんて初めて知ったな。
「そんな事より陛下、何故血盟城ではなくこちらにいらっしゃるんですか?ここから先は眞王廟ですよ。誰もお見えになる予定は無かったんで、近づいてくる気配を不審者だと勘違いしてしまったんですが・・・。陛下の気配を不審者と誤まるなど私もまだまだ修行不足ですね」
「ミレーユさんのせいじゃないよ!俺がギュンターとの勉強を脱走して、この森に逃げ込んだのがいけないんだから」
「脱走してきたんですか?!護衛の者が着いてないところを見るとまさか・・・」
「うん、誰にも言わないで出てきちゃったvv」
その頃血盟城は・・・
「陛下〜、何処にいらっしゃるのですかー?隠れてないで出てきてください。私とお勉強なさるのがそんなにお嫌なのですかー!?」
ギュンターが相変わらずギュン汁を撒き散らしながら喚いていた。
「陛下・・・私はこんなにも陛下をお慕いしているのに何故このような仕打ちを。そんなに私がお嫌いなのですか?それとも私の愛を試しているのですか?」
「何が愛を試すだ、ユーリは僕の婚約者なのだからお前の愛など試すわけないだろう!」
「何ですとヴォルフラム!?我がままプーのくせして。大体、陛下との婚約は事故なのですからさっさと取り消しなさい!」
「誰がプーだ!それに婚約が事故だと?!ユーリが僕に熱烈な求婚したのを目前にしたくせに、よくそんなことが言えたもんだな」
「それは陛下がまだこちらの仕来たりをよく御理解されていなかったからです。よって陛下からの求婚は無効です!」
「何と言おうとユーリが僕に求婚したのは紛れも無い事実だ。所詮、貴様の言うことは負け犬の遠吠えにすぎないな」
「きーっ!!自分の過ちを受け入れそれを正そうとしない卑劣な輩に負け犬呼ばわりされたくありません!!あぁ、なんて可哀想な陛下、いずれ私めがあなたを救い出すナイトとなり必ずや我がままプーの魔の手から救い出してみせましょう」
「ギュンターがナイトだと!?笑わせるな。それに貴様の手に救い出されたら僕のユーリが汁まみれになってしまうではないか!」
・・・ってな感じで汁を撒き散らす超絶美形な王佐ギュンターと、きゃんきゃんポメラニアンのごとく喚いている金髪美少年自称婚約者ヴォルフラムが言い争いをしていた。
いつもならこの喧しい2人を今頃「五月蝿い!!」と一括するであろう長男のグウェンダルはアニシナのもにたあの被害に遭っている最中なのでそんな余裕はなかった。
話しは戻ってユーリとミレーユは・・・
「・・・っで、陛下はギュンターとヴォルフラムが言い争っているうちに脱走してきたんですね」
「うん、グウェンダルもアニシナさんに拉致連行されっちゃたんだ。いつもだったらコンラッドも護衛で着いてきてくれるんだけど今日は城下の視察で朝からいなかったんだ」
「まったく、コンラートはともかく後の者は何やってるんだか・・・」
一通りの話しを聞き終えたミレーユは呆れたようにがっくりとした。
「やっぱり今頃大騒ぎかな?」
「そんな騒ぎにはなっていないと思いますよ?ギュンターやヴォルフラムあたりが騒いでいるかまだ言い争いをしてるかのどちらかでしょうね。それか、アニシナがいるなら今頃2人もグウェンダルのように拉致られてるかもしれません」
またまたその頃の血盟城では・・・
「・・・はっ、こんな言い争いをしている場合ではありません。陛下を一刻も早くお連れしなければ!」
「まったくあのへなちょこめ、自分が魔王だという自覚があるのか?」
「ヴォルフラム今すぐ捜索部隊に陛下の捜索をさせるのです!」
「貴様なんぞに言われなくとも分かっている!僕もユーリを探しに行くぞ!」
「その必要はありません」
やっと冷静?になった2人がようやく行動を起こしたのも束の間、毒女のアニシナがそれを止めた。
「どういう事ですか?アニシナ殿」
「陛下は眞王廟に通じる森にいます。眞王廟の警備部隊の者が陛下と御一緒なので危険はありません。いずれその者が陛下を送り届けてくれる事でしょう」
「何故アニシナにそんなことが分かるんだ?」
「それは私が開発した魔導装置。この「魔導何処でも魔力探知くん」が陛下の強い魔力を探知して居場所を示しているからです!おそらく一緒に探知しているもう1つの強い魔力はミレーユの魔力でしょう。これ程強い魔力は警備部隊の中だけなら彼女しかいませんからね」
アニシナの前に得体の知れない発明品が2人の前に出現した。
「「魔導何処でも魔力探知くん?」」
また胡散臭い発明品だなと2人は思ったが、その台詞を口にする勇気ある者はこの場にいなかった。
「まぁ、とにかく陛下の居場所は眞王廟に通じる森なのですね?直ちにお迎えに上がらなければ」
「待てギュンター、ユーリの迎えは婚約者である僕の役目だ!お前は大人しくここで待っていろ」
「何を言うのです!?陛下のお迎えは教育係である私の役目です!あなたこそ大人しくここで待ってなさい」
「いい加減になさい!!その必要は無いと言った私の話しを聞いてなかったのですか?そんなに元気があるのなら2人共私の実験のもにたあにおなりなさい!」
「もにたあ」という言葉を聞いて、2人は再度始まりそうになった言い争いをあっさりと止めて固まった。
「も・・・もにたあなら先程グウェンダルを連れてったではありませんか。何故私達までもにたあに?」
「・・・はっ、そうだ兄上!!兄上はどうしたというんだアニシナ!?」
「グウェンダルならあそこで伸びています」
アニシナが指をさした方には魂の抜け殻と化したグウェンダルが倒れていた。
その姿を見た2人は彼に哀れみと同情の眼差しを向けた。
その隙にアニシナが2人をあっさりと捕らえて、実験室へと連行しようとした。
「離せアニシナ!兄上をあそこまでもにたあとやらにしたならもう十分だろう!?」
「何を言うのです?!あれ程の魔力ではまだまだ新たな発明品は生み出せません。まったく少し魔力を提供しただけで倒れるとは軟弱な!」
「アニシナ殿、私大事な仕事があるのを忘れてました!なのでもにたあはまた今度ということで・・・」
「仕事など後回しになさい!この私の新たな発明品の実験台になれるのです、光栄に思いなさい」
アニシナが高笑いしながら、青ざめてる2人をずるずると連行して行った。
部屋の前で仕事を終えいつの間にか戻っていたコンラッドが、1部始終話しの内容を立ち聞きしていた。
「ユーリは眞王廟へ通じる森か・・・」
コンラッドはアニシナ被害の巻き添えをくらう前にさっさと踵を返し、ユーリの迎えに向かったのは言うまでもなかった。
やっとコンラッドが登場しましたが、ここでまた区切ります。
次回は多分2人が再会していると思われます。
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