第4話 魔王の行方
ジュリア姫が不思議な少年ミツエモンと運命の出会いをしていた時、別の場所では何やら大騒ぎになっておりました。
ちなみに別の場所が何処なのかは、まだ秘密としておこう。
という訳で・・・・・・
「べぇいかぁ〜!!何処に行ってしまわれたのですかぁ〜!?(大泣)」
「何やってのよ!?たくっ!」
黙っていれば見る目麗しい銀色で長髪の美形な男性が泣き喚いていました。
その男性に、肩に届くか届かないかくらいの長さの薄紫色した髪型の美しい女性が一括していた。
「はぁ・・・持ち場を少し離れた時、たまたま通りかかったあんたに番の代わりを頼んだ私も馬鹿だったわ。あんたに頼まなければ、陛下の脱走も防げたかもしれないのに」
「ですがミレーユ、あの陛下が可愛らしく上目遣いでおねだりされたら誰でも昇天するに決まってます!」
女性の名はミレーユ、とある場所の番人をしている。
「それは陛下馬鹿のあんただけでしょう?ギュンター」
一方、男性の名はギュンター。
どうやら『陛下』という者のお世話係兼親衛隊の様である。
「それにても流石は私の陛下です。ついこの間も外界から進入してきた者がいるから出入り口の封印を強化してもらったというのに、やはり陛下の強力な魔力の前では封印も無に等しかったですね・・・」
何処か頬を赤らめて心酔した様にギュンターは囁いた。
「そういえば、その侵入者って今はどうしてるの?全く姿が見かけないけど」
「あの侵入者でしたらアニシナ殿が連行されたっきりですよ」
「あぁ、未だに例の『もにたあ』になってるのね。可哀想に・・・・」
「えぇ、そこは同情の余地はありますね。お陰で私が『もにたあ』の被害から免れますけど」
ミレーユとギュンターはこの場に侵入して来た者を哀れんでいた。
「まぁ、ここに入って来れたと言う事は少なくとも邪な考えを持つ者では無いと言う事ね。ここはもう少し様子見て、アニシナがあの人に飽きたらここから解放してあげるのが1番ね」
「それが良いでしょう。あの者は知らずに迷い込んで来ただけの様ですし」
説明しよう、ミレーユやギュンターがいる場所では不思議な結界が貼られております。
その結界のお陰で邪な考えを持つ者や悪どい事を考えてる者には、この場は見る事も入って来る事も不可能であったのだった。
しかし、綺麗な心を持つ者には例外な様でこの場に入って来れる者がたまにいる様だ。
その大抵が迷い込んで来たというのがオチである。
ミレーユとギュンターが対談していたら、顎割れ金髪の大男が2人に話し掛けてきた。
「よぉ、今戻ったぜ」
「お帰りなさい、アーダルベルト」
顎割れ大男の名はアーダルベルト。
ここの陛下という者の護衛に就いている。
しかし、今回は下っ端一兵卒の指南役に抜擢されて護衛職から離れていた為、陛下の脱走とやらは防げなかった様だ。
「戻って来たばかりで悪いけど、早速仕事よ。陛下が脱走したわ」
「あの坊主、等々やらかしたか。俺がいない時に見計らって脱走するとは、随分と計画的だな」
「アーダルベルト、『坊主』では無く『陛下』とお呼びなさい!我等が魔王陛下に失礼ですよ!」
「その陛下の脱走の原因であるギュンターに、アーダルベルトに文句を言う資格は無いと思うわ」
ミレーユの突っ込みにギュンターはぐっ・・・と言葉を詰まらせた。
「とにかく、急いで陛下を探しに行った方が良いわ。アーダルベルト、私も行くから2手に分かれて探しましょう」
「ミレーユが一緒に探してくれるのはありがたいが、ここの番の方は良いのか?」
「そっちは私の部下に頼んであるから大丈夫よ。ギュンターもここに残ってくれるでしょうし」
「えっ?私もご一緒に陛下を探しに・・・・」
「残ってくれるわよね?ギュンター(にーっこり)」
「は・・・はい」
ミレーユのドス黒い笑顔で脅し・・・もといお願いされて、ギュンターは泣く泣く頷くしかなかった。
それを見ていたアーダルベルトは不憫な奴と同情していた。
こうして、アーダルベルトとミレーユが脱走した魔王陛下を捜索する事になったのでした。
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