第5話 金髪顎割れ大男の名はスケさん?
魔王陛下の脱走してからの事、側近である魔王の2人の臣下が2手に分かれて捜索に向かったのでした。
それはそうと話しはジュリア姫と謎の少年ミツエモンの方へと戻そう。
ジュリア姫にすっかりと打ち解けてしまったミツエモンは、魔の森の中にも関わらず2人で仲良く手頃な木陰に腰掛けながら話しに花を咲かせていた。
「そうなの、ミツエモン君も自分の城から脱走してきたの。貴族の様な環境で育つと自由に外を出歩けなという所が本当に厄介よね」
「ジュリアさんもそう思います?皆は俺の事を心配してくれてるのは十分に分かってるけど、少し過保護過ぎな気もするんですよね」
「私の所もそうよ。お父様が何かと私の身を心配して護衛を就けてくれるけど、私より弱い男性ばかりだからむしろ頼りないわ。自分の身は自分で守れるって何度もお父様に言ってるのに。過保護過ぎると言うのも困るわよね」
「いや、ジュリアさんの場合は色んな意味で心配されてるんだと思いますけど・・・。そんな事より、ジュリアさんも俺と同じで脱走してきたと言うなら大騒ぎになってるんじゃないですか?俺の所も今頃は世話係が発狂してるだろうし」
そろそろ自分の捜索隊でも出始めるかな?っと思ったミツエモンだった。
「私の所は大丈夫よ。もし、護衛が力ずくで連れ戻しに来ても返り討ちにするつもりだから」
「あはは・・・(苦笑)」
ミツエモンはジュリア姫の腕っ節の強さを実際に目の当たりにした事から、ジュリア姫の言い分に乾いた笑いしか出なかった。
「それにしてもミツエモン君って珍しい名前ね。あまり耳にした事が無い名だわ」
「そ・・・そうですか?」
「えぇ、せっかく可愛い顔してるのに何だか勿体無い気がするわ。髪の赤毛も似合わないって訳ではないのだけど、もっと別の色の方がしっくりくると思うの。そうね・・・・例えば黒とか?」
ミツエモンは俄かにギクリと体が強張った。
「なーんて、冗談よ。黒は魔王だけが持つ象徴とされるくらいだから、あまり良くない事ばかり言われるものね。気に障ったらごめんなさい、ミツエモン君」
「じょ・・・冗談キツイですよジュリアさん。俺なんかが魔王の象徴が似合う訳ないですよ」
ジュリア姫はキョトンとした顔で言った。
「そうかしら?黒ってとっても綺麗な色だと思うわ。私の国の人達は邪悪とか不吉な色とか言ってる人が多いけど、私はそんな風に思わないわ。魔王だとかそんなの関係無く、ただ純粋にミツエモン君に似合いそうだと私は思ったの」
ミツエモンは恥ずかし気に俯きながらジュリア姫にお礼を言った。
「ありがとう・・・ございます///」
「さて・・・と」
暫らくミツエモンと雑談に一区切りついたのか、ジュリア姫は掛け声と共にすっと立ち上がった。
「私はそろそろ行ってみるわね」
「じゃあ俺もそろそろ行ってみます。俺は適当にぶらぶらして満足したら自分の城に帰るつもりだけど、ジュリアさんは何処に行くんですか?」
「それは勿論、魔王が森の奥深くに住まうと言われる魔の森に来たのだからやるべき事はただ1つ。魔王討伐よ!」
「ま・・・魔王討伐?!マジですか!?魔王が本当にいるという根拠は何処にも無いんですよ?」
「えぇ、マジよ。でも、討伐と言うのは名ばかりなの。それに、嘘か本当か分からないなら実際に自分の目で確かめる方が手っ取り早いじゃない」
「それはそうですけど・・・・。それに、魔王討伐が目的なのに討伐しないんですか?」
「その時の状況によるわね。魔王は私達が住む国に災いをもたらす者だとか言われるけど、実際の魔王は私達に何もしてこないじゃない?その言い伝えがただの噂に過ぎないとしたら、魔王を討伐する理由なんて何処にも無いもの」
ジュリア姫がそう言うと、ミツエモンは何処かほっとした様な感じだった。
「でも、実際に魔王がいるのだとしたら手合わせくらいはしたいわね。どうせなら、強き者で己の力量を計ってみたいわ!」
「狽「やいやいや、ジュリアさんは十分過ぎる程強いです!へなちょこ魔王なんかじゃあ、ジュリアさんの強さに足元も及びませんって!!」
「やけに詳しいわね、ミツエモン君。もしかして、魔王に会った事があるの?」
「い・・・いえ、ただの想像です・・・・」
ジュリア姫とミツエモンが話している最中に、突如ミツエモンは何者かに襟首の所をぐわしと捕まれ猫の様に宙ぶらりんになってしまった。
ミツエモンが恐る恐る振り返ると、顎割れ金髪の大男が呆れた様な顔でこちらを覗き込んでいた。
「や・・・やぁ、随分とお早いお帰りで(滝汗)」
「たくっ、人の手を煩わせやがって相変わらず困った坊主だな。皆心配してるぞ?」
この顎割れ金髪大男がミツエモンと面識がある様子から、この人が大方ミツエモンを探しに来た護衛だとジュリア姫は認識した。
「あなたがミツエモン君の護衛の人?」
「ミツエモン?」
「そ・・・そうなんですよ!ジュリアさん。この人が俺の護衛に就いてくれてる『スケさん』って言うんですよ!」
顎割れ大男の名は急に『スケさん』っと紹介されたので不思議そうな顔をしながら、ミツエモンの方へと目を向けた。
ミツエモンの方は(頼む、今は話しを合わせてくれ!!)っと必死に目で訴えていた。
何となくその事を察した大男は(仕方無ぇな・・・)っと心の中でボヤキながら、ジュリア姫に自己紹介した。
「おぅ、俺の名は『スケ』だ。ミツエモン坊主の護衛職に就いてる。よろしくな」
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