第3話 ジュリア姫を追え!
魔王討伐へといつジュリア姫が脱走するかも分からない状況の中、対策を打とうとするにも既に事が遅かった。
一応は姫の護衛職に就いてるへたれ男…もといコンラート・ウェラーは、姫の脱走の件がオーディル王の耳に入って事が大きくなる前に次の対策を打つべく考えを張り巡らしていた。
「わざとらしく人の気に障る様なナレーションを止めてくれないか?ナレーター」
おや?聞こえてましたか、コンラッドさん。
それは失礼いたしました。
「失礼と言われても誠意が感じない。本当に悪いとは思ってないだろう?」
まぁまぁ、細かい事ばかり気にしてるといつかは頭がハゲますよ?
「ハゲ・・・大きなお世話だ!大体、あなたがジュリア姫が脱走するという展開にしなければ、こういう事にはなら無かったんだぞ!」
あらまぁ、心外ですね。
私が考えた内の展開で、コンラッドさん自信に被害が及ばない方の展開を選んだのですよ。
「・・・あまり聞きたくはないが、あえて聞いておこう。例えばどういう展開を考えたんだ?」
例えばジュリア姫が脱走する最、コンラッドさんが脱走の邪魔をするべく姫の前に立ち塞がるとか・・・・
・・・・起こりえたかもしれない可能性の回想・・・・
「そこをどきなさい、コンラッド。私は魔王討伐に行って、必ず魔王を退治してくるわ!」
「お言葉ではありますがジュリア姫、そういう訳にはいきません!どうしても魔王討伐に行きたくば、俺は力づくでもあなたを止めます!」
「あらそう?だったら目には目を、力づくには力づく・・・ね。それでは遠慮無く、腕慣らしも兼ねて思い切り行かせていただくわvv(にっこり)」
・・・・回想終了・・・・
「・・・・何だか、お決まりのパターンになりそうだな」
そうですね、高い確率でコンラッドさんが返り討ちに遭うパターンになりますね。
「正に、『俺の屍を越えて行け』・・・・だな。ジュリア姫の場合だったら、言葉通りの如く実行に移すに決まってる」
ですから、『まだ』被害に遭ってない今回のパターンはまだ良い方でしょう?
「確かにそうですが・・・・・ん、『まだ』?」
いえ、何でもありません。
ところでこんな場でいつまでも私と話してるより、早くジュリア姫の後を追った方が良いんじゃないですか?コンラッドさん。
「そうだな、早くジュリア姫に追いつかないと面倒な事になりそうだ。今からならまだ姫に追いつくかもしれない」
こうしてコンラッドもジュリア姫の後を追って、魔王が住まうと言われる魔の森へと旅立つ事になりました。
「・・・・と、その前に」
どうしたのですか?コンラッドさん。
「いや、一応ジュリア姫の影武者を用意しといた方が良いと思って。という事で、誰かいないか?」
それなら丁度良い人にお願いしてありますからご心配無く。
では新キャラさん、どうぞ。
「は?い。ある時は可愛いメイドさん。またある時は優秀な護衛。その名は愛と正義のラブリー天使、グリ江ちゃんの登場で?すvv」
セクシーポーズ&投げキッス付きでドレス姿のグリ江ちゃんが登場した。
コンラッドは硬直している。
そして次の瞬間、無言で抜刀してグリ江ちゃんに斬りかかろうとした。
「わわっ、ちょい待った!コンラッド」
「黙れ、歩く変態魔。気色の悪い女言葉と真似は止めろと言っただろう、ヨザック」
「そうは言っても女になりきれってナレーターに言われたから、仕方無いっすよ」
「まさか、ヨザックをジュリア姫の影武者に仕立て上げるつもりか?ナレーター」
はい、女装をする役目はヨザックさんだと昔から相場が決まってますから。
「それなら、もっとまともなのが他にもたくさんいるだろう?何もヨザックじゃなくても」
だってそうした方が面白そうですから(キッパリ)。
「・・・・・仕方無い。ヨザック、今回は女装を大目に見てやる。だからジュリア姫の脱走の事は何が何でも誤魔化すんだ!分かったな?」
「へ?い」
「では、俺は行って来る。後の事は頼んだぞ」
今度こそ本当にコンラッドは魔の森へと旅立つ事になりました。
所変わって、ジュリア姫はと言うと・・・・。
魔の森へと到着していた。
森の中は深い霧に包まれて、辺りが良く見えない状況だった。
「魔王を退治しに魔の森へと来たのは良いけど、肝心の魔王は何処にいるのかしら?」
そんな魔の森の中で、ジュリア姫は迷子となっていました。
「困ったわね、完全に迷子になってしまったわ。でもどうにかなるわよね、きっと。立ち止まる暇があったら前に進むべきよ!」
そう言ってどんどん前へと進むジュリア姫でした。
「うわー!!」
何処からともなく、悲鳴声が聞こえて来た。
その声を聞きつけたジュリア姫は、声が聞こえた方へと向かった。
ジュリア姫が向かった先には、小柄で赤毛の少年と野生の熊が対峙していた所だった。
「・・・ひっ、く・・・熊・・・」
少年は熊に怯えている様だった。
熊はのそりと少年へと近付く。
少年はもう駄目だと目を瞑った。
野生の熊は少年に襲い掛かろうとした。
「危ない!」
ジュリア姫は少年の前へと飛び出て、野生の熊の豪腕を受け止めた。
「とおっ!」
ズシーン!!
そのまま野生の熊に背負い投げをした。
野生の熊に会心の一撃!
野生の熊はジュリア姫に恐れをなして逃げ出した。
「ふん、大した事無いわね」
ジュリア姫は手をぱんぱん払いながら少年に向き合った。
「大丈夫?怪我は無い?」
「は・・・はい、ありがとうございました。お姉さんこそお怪我は?」
「私も大丈夫よ。それより、あんな熊如きに襲われそうになるなんて情けないわよ?もっと自分自信を鍛えなきゃ」
「そ・・・そうですね」
少年は乾いた笑いしか出なかった。
野生の熊を素手で追っ払う女性なんて、そうはいる訳無いと思っていた。
「お姉さんはお強いんですね」
「いいえ、私はまだまだ半人前よ。もっと拳闘を極めるには鍛錬あるのみよ!」
それを聞いた少年は、『もう十分過ぎる程強いです』と心の中で突っ込みを入れた。
「そういえば、自己紹介をまだしてなかったわね。私の名はジュリアよ。あなたは?」
「お・・・俺ですか?俺の名は・・・」
少年は一呼吸して自分の名を名乗った。
「俺の名はミツエモンです」
ジュリア姫と不思議な少年、ミツエモンとの出会いでした。
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