第7話 護衛コンラッドに春が来た?
コンラッドとミレーユは森の中を立ち上る煙を目指して掛けていた。
ミレーユはコンラッドと関わり合いになる事はあまり得策では無いと考え全速力で引き剥がそうとしたが、コンラッドの方も日々ジュリア姫のスパルタ訓練の賜物のお陰でミレーユの足の速さには追い付いていた。
そうこうしている内に、煙の立ち上っていた場所にあっさりと2人は到着してしまった。
そこで2人が目にした物は・・・・・・。
ハグハグ・・・ムグムグ・・・・。
「スケさんは料理の腕も相変わらず天下一流だよな」
「猪のあぶり焼きってこんなに美味しいのね。私、猪を口にするなんて生まれて初めてよ。ミツエモン君の護衛は料理も上手だなんて、本当に羨ましいわ」
「そりゃどうも。しかし・・・この森に生息する超獰猛で最強の主だと言われる超巨大猪に遭遇して、いきなり回し蹴りをお見舞いした女なんて俺も初めて見たぜ・・・・(汗)」
ジュリア姫とミツエモンは巨大な猪のあぶり焼きを美味しそうに頬張り、スケさんはその猪を調理していた。
それを見たコンラッドとミレーユはガクリと脱力した。
脱力しながらもミレーユはこう思った。
(ミツエモン君にスケさん?・・・・って、あの2人の事よね、きっと)
コンラッド達がいる事にジュリア姫が気づいて話し掛けた。
「あら、コンラッドもやっと来たのね。どうしたの?随分と疲れた様な顔して」
「ジュリア姫!あなたは一体ここで何やってるんですか!?」
「何って、猪のあぶり焼きを食べてるの。とっても美味しいわよ」
「見たまんまの事を直球で返さないでください!ったく」
ジュリアとコンラッドが話してる最中に、ミレーユはスケさんを少し離れた場所に連行して、ジュリア姫達に聴こえない様に声を潜めて話した。
「で、ここで何をやってるのかしら?スケさん」
「坊主を見つけて直ぐに知らせなかった事なら悪かったよ。どうもあのジュリアって女に調子を狂わされてな」
ミレーユがちらりとジュリア姫の方を見た。
「・・・・なるほど、外界の者がいたからとっさに偽名を名乗ったのね」
「そういう事だ。余計な事は坊主も喋って無い様だし、俺達の正体にはまだ気づいて無さそうだぜ?」
「そうだと良いんだけどね」
それぞれ2組ずつ話しをしていたら、ミツエモンが4人に話し掛けた。
「おーい、皆何やってんの?せっかくの猪が冷めちゃうぞ?」
「あら、本当だわ。完全に冷めない内に早く食べちゃいましょう」
ジュリア姫はコンラッドとの会話を中断させて、また料理をを食べ始めた。
「・・・・あの方も相変わらずね。スケさん、私も頂いて良い?料理の良い匂いだらお腹空いてきたわ」
「良いぜ。超巨大と言われる猪を調理したから、まだたくさんあるからな」
ミレーユもミツエモンの近くに腰掛けた。
「ミツエモン様、この件は後程じっくり話しを聞かせていただきますから」
「はい・・・・すみませんでした、ミレーユさん」
「今はとりあえずこの件は保留にするとして、私もスケさんの料理を頂きますね」
そう言ってミレーユもこんがり焼けた猪に手を伸ばして頬張り出した。
「ハグハグ・・・・スケさんの料理久しぶりに食べるけど本当に美味しいわ。猪肉の焼き具合も味付け丁度良い具合ね」
コンラッドが今度はミレーユの近くまで来て、ミレーユに話し掛けた。
「あなたまで呑気に何やってるんですか!?」
「良いじゃない、お互い捜し人は見つかった事なんだし。それに、腹が減っては戦は出来んって言うじゃない」
ミレーユの言葉にジュリア姫は共感した。
「あなた良い事言うわね。コンラッドもそれくらいのユーモアがあれば良いんだけど。私はスザナ・ジュリア、ジュリアって呼んでくれると嬉しいわ。あなたの名は?」
「私はミレーユよ。ミツエモン様に仕える従者の1人だと思ってくれて構わないわ」
「ミレーユね、よろしく。あなたとは気が合いそうね」
「そうね、私もジュリアの様な色んな意味でハッキリさせてそうな人は嫌いじゃないわ」
何かと置いてきぼりになってたコンラッドがぼやく様に言った。
「あぁ・・・・あの2人は本当に気が合いそうですね。前世辺りは家族とか姉妹だったんじゃないですか?」
コンラッドの元にスケさんが近付いて話し掛けた。
「ウチの主と従者仲間があんなんで悪かったな」
「いえ、こちらこそウチの主が世話になった様ですまなかった」
「そうか、お前がジュリアが言ってた護衛って奴か」
「ジュリア姫が?」
「あぁ、剣の腕前だけなら我が国1番かもしれないと話してくれたぞ」
コンラッドはジュリア姫がそんな風に自分の事を認識されてたとは知らず、思わずジーンとしてしまった。
「だが拳闘の腕前は全然駄目駄目、並みの熊以下。おまけに肝心な所ではへたれてしまって、歳を取ったらマダオになりそうで心配だ・・・・とかも言ってたな」
それを聞いたコンラッドはまたもやガクリと脱力した。
予想通りの認識のされ方で若干涙が流れそうになったらしい。
コンラッドとスケさんの元にミツエモンも近寄って来て、にっこりと可憐な笑顔をさせながら2人に焼けた猪を差し出した。
「あんた達も突っ立てないで一緒に猪食べようぜ。なっ?」
その笑顔を見たコンラッドは『ドクン・・・///』と胸が高鳴りながらこう思った。
(か・・・可愛い///何者なんだ?この可憐な御方は・・・・)
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