第1話 ジュリア姫とその護衛
ある昼下がり、とある国に住むジュリア姫は中庭で護衛を探しておりました。
「コンラッド、何処に行ったのかしら?拳闘の組み手に付き合ってもらおうと思っのに」
護衛のコンラッドはと言うと、中庭に建つ木々の上の枝内に潜んでジュリア姫を見ていた。
コンラッドはジュリア姫から逃げていたのだった。
(冗談では無い!あの姫の組み手に毎回付き合ってたら命がいくつあっても足りない!!)
コンラッドがそう思っていたのも束の間、ジュリア姫はコンラッドが潜んでいる場所の下まで来て、木に一発の鉄拳をお見舞いした。
「せい!!」
ズシーン!!
思いもよらない衝撃がコンラッドに伝わってきて、衝撃に備えて構えて無かったコンラッドはあっさりとジュリア姫の足下へと落ちたのだった。
「コンラッド、ここにいたのね」
「ジュ・・・ジュリア姫、本日もご機嫌うるわしゅう様で・・・(汗)」
「えぇ、おかげ様で私の体調は今日も絶好調よ。ところでコンラッド・・・」
未だに落ちた時のままの体制でいるコンラッドに、ジュリア姫はしゃがんで目線を合わせながらにっこりと微笑みながら言った。
「今日も拳闘の組み手、付き合ってくれるわよね?(にっこり)」
「はい・・・(泣)」
コンラッドは心の中ではらはらと涙を流していた。
(あぁ・・・今回も観念するしか無いのか(泣))
こんなんで嫁の貰い手があるのか、ジュリア姫の将来に不安が隠せないコンラッドであった。
一方、城下町では不吉な噂が広がっていた。
「なぁ、あの噂を聞いたか?」
「噂って魔王が復活したと言う噂か?」
「あぁ、その噂がもし本当ならこの国も危ないんじゃないのか?」
「大丈夫だろう、お城には優秀な兵がたくさんいる事なんだし。それに、魔王が復活したとしても今まで何も起こらないのは明らかに変だしな。噂はデマなんじゃないのか?」
「だと良いんだがな」
一波乱起きる前触れなのではないかと、城下町に住む人達は不安に駆られていたのでした。
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