イベント満載の秋! 文化祭当日で大騒動 前編
遂に学校行事で開催される秋の大イベント、文化祭当日を迎えた。
朝早くから盛大に開催を知らせる花火を打ち上げ、アーダルベルト番長の通う学校の生徒達はこの文化祭に足を運んでくれるお客様方を大歓迎でお出迎えしている。
文化祭定番のクレープ屋、焼きそば屋、お化け屋敷などなど出店や展示の種類も豊富である。
それぞれのクラスの学生達はとても張り切っている様だ。
アーダルベルト番長率いる『メイド喫茶』と、ジュリア率いる『執事喫茶』も皆それぞれ持ち場に就き、いつでもバッチコイの準備万端の状態であった。
半ばヤケクソ気味でメイドとなったアーダルベルト番長と嬉々としながら執事となったジュリアの間では見えない火花が散っていた。
学生達が待ちに待った文化祭の開催と共に、どちらのクラスの売り上げが良いかという2人の勝負の幕開けでもあったのだった・・・・。
ジュリアお気に入りの遠い親戚の男の子、渋谷有利とその友人の村田健もジュリアに招待されて文化祭に遊びに来ていた。
「ここかい?渋谷の遠い親戚のお姉さんが通ってる学校の文化祭というのは」
「うん、ジュリアさんって言う人なんだけど面白いものが見れるから是非遊びに来てくれって言われてさ。悪いな村田、付き合わせちゃって」
「こんなくらいお安い誤用だよ。どうせ今日は他の予定も入って無いしね。それにしても、結構ここの文化祭は繁盛してる様だね」
辺りを見回すと、たくさんのお客さんが文化祭に遊びに来ている様だ。
どの出店している所に行っても、暫くは待ち時間が掛かりそうであった。
「まずは何処に行くんだい?渋谷」
「そうだな〜、まずはジュリアさんの所に行ってもいいかな?」
「勿論いいよ。実は僕楽しみにしてたんだよね、例の美人な親戚のお姉さんを見れる事をさ」
「ジュリアさんの事?まぁ、ジュリアさんは確かに美人な女性だよ。ハキハキとして活発な人でさ、親戚の俺でも尊敬しちゃうんだよな」
「そうなんだ。いいな〜渋谷は、美人な親戚のお姉さんがいて」
ジュリアの本性に、ユーリは全く気づいていない。
最近知り合いとなったユーリの野球仲間であるコンラッドが、ジュリアによって散々悲惨な目に遭ってる事は当然ユーリは知らないのであった。
「「・・・・・・・・・・・・・・」」
ユーリと村田がジュリアのクラスの執事喫茶に来てみると、凄い数の女の子の行列が出来ていた。
あまりの行列に2人は唖然としている。
「・・・・渋谷、何だい?ここは。見事に女の子のお客さんしかいない様だけど」
「確かジュリアさんのクラスは執事喫茶をやるって聞いたけど、凄く大人気みたいだな(汗)」
ユーリと村田がこの行列に並ぶかどうかを考えていた時、執事喫茶の仕事最中のジュリアが2人の存在に気づいて中から出てきた。
「ユーリちゃん、遊びに来てくれたのね。我がクラス、執事喫茶へようこそご主人様」
「ジュリアさん?!その格好は一体!?」
初めて見るジュリアに執事姿があまりに麗しくて、ユーリと村田は思わず見惚れてしまった。
「あぁ、この格好ね。私は執事係りになったのよ。一緒にいるそちらの子はユーリちゃんのお友達?」
「はい、渋谷の親友をやらせてもらってる村田健と言います。初めまして、渋谷の親戚のお姉さん」
「初めまして村田君。私はユーリちゃんの遠い親戚のジュリアよ、よろしくね。私の事はジュリアって呼んでね」
「はい、ジュリアさん。こちらこそよろしくお願いします」
村田とジュリアは笑顔で自己紹介の挨拶をしながら握手した。
お互いがこの人は人畜無害だと感じたらしい。
「立ち話しも何だし、せっかくだから寄っていってくれると嬉しいわ。でも、ユーリちゃん達に順番が回ってくるのは少し時間が掛かりそうね。時間は大丈夫?」
「大丈夫ですよジュリアさん、俺も村田もどうせ暇ですから。それより、この女の子の行列は一体どうしたんですか?」
「それ僕も気になりました。中で何が起きてるんです?」
「中に入れば分かるわよ。それじゃあ私はまだ仕事の途中だから、ユーリちゃんも村田君もまた後でね」
そう言ってジュリアは2人を後にして執事喫茶の中へと戻って行った。
「ジュリアさんかー、渋谷の親戚のお姉さんって予想以上に綺麗な人だね。ジュリアさんもああ言ってくれてる事なんだし並ぼうよ、渋谷」
「そうだな、そうするか」
少し居た堪れない気分になりながらも、女の子ばかりの行列の最後尾にユーリと村田は並んで待つ事にした。
それから暫らくの時間が経過した後、漸く2人にも順番が回ってきて中に入る事が出来た。
「「「「「お帰りなさいませ、ご主人様」」」」」
2人が中に入った途端、執事の格好した美麗な学生達に一斉にお出迎えされ空いてる席へと案内された。
学生達の出店している執事喫茶とはいえ、かなり本格的さに2人は圧倒され気味だ。
「ご主人様、ご注文は何になさいますか?」
「俺は紅茶でお願いします。村田は何にする?」
「それじゃあ、僕も紅茶で」
「紅茶が御2つでございますね?かしこまりました、少々お待ちください」
注文の終えた後、そんなに待たないうちにジュリアと同じく執事の格好したコンラッドが2人の元へ紅茶を運んで来た。
「いらっしゃい、ユーリ。我が文化祭に遊びに来てくれて嬉しいですよ」
あまりに様になりすぎていて執事と言うより、どこぞのホストみたいなコンラッドだった。
「おぅ、コンラッド。その執事の格好よく似合ってるなー。女の子の大行列の原因はあんただったのか」
ユーリは1人で納得して『うん、うん』と頷いていた。
「俺はどんな女の子のお客様が来てくれる事よりも、ユーリが来てくれた事の方がよっぽど嬉しいですよ」
「何言ってんだよ、コンラッドは」
コンラッドが本心で言ってる言葉でも、ユーリには冗談にしか取ってもらえず笑われてしまった。
女の子達が背後で頬を赤く染めながら『きゃあ、きゃあ』と騒ぐコンラッドの悩殺笑顔でも、相変わらずユーリには効果なしの様だ。
流石天然、恐るべし。
「渋谷、この執事を通り越してホストみたいな人は君の知り合いかい?」
「あぁ、村田は初めてだったよな。ほら、前に話した最近知り合いになった俺の野球仲間のコンラッド。コンラッドも俺と同じ野球好きみたいでさ、最近暇な時はよく2人でキャッチボールとかしてるんだ」
「そうか、君が前に渋谷の言っていた人か。僕は渋谷の親友の村田健、よろしく」
コンラッドも村田によろしくと言いながら挨拶した。
表向きは普通に挨拶している村田とコンラッドだが、『何故かこの人とは馬が合わない気がする・・・・』と思っていた2人だった。
本人達は決して認めたくないだろうが、お互いが腹黒という事で同族嫌悪の類だろう。
しかも、ユーリを見る時と他の人を見る時の表情があまりに違う為、コンラッドがユーリに対して好意を持ってる事にあっさりと村田は勘付いた。
「コンラッド、あちらのお嬢様方が貴方をご指名してるわよ」
「えっ?ジュリア、ここは指名制なんて無かった筈ですが・・・」
「いいから、さっさと行きなさい!」
「はっ、はいぃ!!」
ユーリ達と楽しく会話していたコンラッドは、ジュリアに見つかりユーリ達の元から追い払われてしまった。
まぁ、『ユーリ達』と言うより主にユーリと楽しく会話していたの方が正しいのだが。
「あ・・・あの、ジュリアさん?」
「なぁに?ユーリちゃん」
「いえ、何でも無いです」
一瞬、ジュリアさんの表情が恐ろしく見えたのは俺の気のせいだよな?
ユーリはいつもの表情に戻ってるジュリアを見て、『うん、気のせいだ』と思い直して気にしない事にした。
さっきのやり取りで3人の関係に大方察しのついた村田だった。
「なるほど、ジュリアさんもかなり苦労している様だね」
「何が?」
ユーリは村田が言った意味が分からず、キョトンと首を傾げていた。
村田は何でもないよと言いながら、あまりに鈍感すぎるユーリに苦笑した。
「そういえば、ユーリちゃん達はアーダルベルトのクラスにはもう行った?」
「いえ。と言うより、アーダルベルトが何処のクラスなのか俺達知りませんから」
「アーダルベルトのクラスはここの直ぐ隣りよ。後で行ってみるといいわ、面白いものが見れると思うわよ?」
「一体何が見れるんですか?」
ユーリの問い掛けに、ジュリアは悪戯っぽい笑みを浮かべながら言った。
「それは行ってからのお楽しみよvv」
紅茶を飲み終えたユーリと村田は執事喫茶を後にして、アーダルベルト番長のクラスが出店しているメイド喫茶へと向かったのでした。
文化祭当日編はまだ続きます!
メイド番長の出番は次回となります。
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