2人は付き合ってる?
放課後の生徒同士の寄り道、それはほとんどの者がやってる事である。
根が真面目なアーダルベルト番長とジュリアも学校帰りに何処かに寄る事がある。
たまたまアーダルベルト番長とジュリアが寄り道して帰りが遅くなったある日の事であった。
「お腹空いたわね。ねぇ、アーダルベルト。まだ時間があるなら何か食べていかない?」
「それは別に構わねぇけど、ジュリアは大丈夫なのか?」
「今日は帰りが遅くなるかもって、ウチの人に予め言って来たから大丈夫よ。後輩のギーゼラとだって外食して帰る日だってあるんだから」
「なら心配はいらねぇな。食いに行く場所なんだが、俺のお勧めの所があるぜ。そこに行かねぇか?味は保障するからよ」
「えぇ、勿論良いわよ。ふふっ、アーダルベルトのお墨付きなら安心ね。どれだけ美味しいのか楽しみだわ」
「高級料理系とかの期待はするなよ?俺が案内する場所は庶民の食堂屋なんだからな」
「失礼しちゃうわ、アーダルベルトったら。まるで私が高級料理しか口にしないみたいな言い方じゃない」
「だってお前、一応は金持ちのお嬢様だろう?」
「確かに、他の家よりは裕福に育てられてきたかもしれないけど、そういう言い方されるのは好きじゃないわ。どうせなら変に気を使ってもらわない方がよっぽど嬉しいもの」
「そうか・・・・悪かったな」
「・・・・今回は許すけど、次にそういう事言ったらいくらアーダルベルトでも鉄拳が飛ぶわよ?覚悟しておいてね」
「あぁ、肝に銘じとく。もう2度とそんな事は言わ無ぇよ」
「なら良いわ。さぁ、早くアーダルベルトのお勧めの場所に行きましょう」
「そうだな、腹も減った事だし行くか」
アーダルベルト番長が案内した場所は、商店街の一角にある若干古びてる食堂であった。
しかし、食堂の扉には『本日は都合により午後6時より休業させていただきます』の札が掛けられていた。
お勧めだとジュリアを案内したのは良いが、閉店となってはどうしようもない。
アーダルベルト番長はバツの悪そうな顔して頭を掻きながら言った。
「参ったな、せっかく来たのにもう閉まってるのか」
「残念だけど仕方ないわよ、アーダルベルト。今日は別の場所に行きましょう?」
ジュリアがそう言うと、扉がガラリと開いて中からマキシーンが出てきた。
「聞き覚えのある声だと思ったら、やはりアーダルベルト番長でしたか。ジュリアさんも一緒に来てくれたんですね」
「よぉ、いたのか」
「あなたは確かアーダルベルトの手下の1人、マキシーンだったわね。この食堂で何をやってるの?」
「そういやあジュリアに言ってなかったな。マキシーンは学校が終わった後、この食堂でバイトしてるんだぜ」
「はい、親父とお袋は単身赴任で共働きをしてますが、収入もあまり良いとは言えないので少しでも家計の足しにでもなればと思ってバイト始めたんです。俺、人相悪いから最初は中々雇ってくれる場所無かったんですよ。でも、この食堂を開いてるおばちゃんが良い人でバイトをしたい訳を言ったら快く俺を雇ってくれたんです」
「そうだったの、良い所が見つかったみたいで良かったわね。バイトも双子ちゃん達の世話の両立頑張ってね、応援してるわ」
「はい、ありがとうございます」
「ところでよ、マキシーン。今日は店を閉めるのいつもより早くねぇか?」
「実は時々こうして店を早く閉めて、おばちゃんが俺と妹達の為に料理をごちそうしてくれるんですよ」
「じゃあ、今日はお前達の貸切状態みたいなもんだな」
「すみません、番長」
「お前が気にする事ではないだろう。せっかくのおばさんの厚意なんだから、無駄なんかにするんじゃねぇぞ?」
「はい」
「双子ちゃん達も、もう来てるの?」
「妹達ならそろそろ・・・・・」
マキシーンがそう言い掛けると、背後の方から『きゃっ、きゃっvv』と双子達の賑やかそうな声が聴こえてきた。
「おっ?噂をすればだな」
「「ポニーvv」」
「ジェイソン、フレディ、来たな。・・・おっ、キーナンも来たのか?」
双子達の後ろに疲れた顔したキーナンまでもがやって来た。
「偶然街中でお前の妹達を見つけてな。それで双子が俺に夕飯まで少し時間があるから遊べ、遊べと五月蝿かったんだよ」
「ポニ、キーナンとね追いかけっこしながらかくれんぼもしたの」
「ポニと遊ぶのも楽しいけど、キーナンと遊ぶのも凄く楽しかったよvv」
いつもハイテンションな双子達の世話するマキシーンは、遊びと称した世話係りをやってくれたキーナンに心底申し訳ない気分でいっぱいになった。
まぁ、キーナンを見る限りは何処も怪我とかしてそうに無かったので、今日の遊びはまだいくらか落ち着いてくれてたという事に若干安諸した。
「いや・・・・何つぅか、悪かったな。人一倍手を焼く妹達の世話をしてくれて」
「小学生のガキをほっとくのも気が引けたしな。しかし・・・・小学生と言うのは、普通もう少し大人しいもんじゃないのか?」
「俺の妹達はあれが普通だ・・・・」
溜息が出るマキシーンであった。
いつもより体力消耗しているキーナンが双子達と何があったのかは、皆様の想像にお任せして話しを戻そう。
双子のジェイソンとフレディはあ、アーダルベルト番長とジュリアもいる事に気づいた様だ。
「あっ、マチョだ」
「ジュリアさんもいるー」
「よぉ、また会ったな」
「久しぶりね、ジェイソンちゃんにフレディちゃん。元気してた?」
「ジェイソン達はいつも元気だよ。ねっ?フレディ」
「うん、フレディ達は病気も怪我もしないんだから」
「怪我をするのはいつも俺の役目だけどな・・・・」
双子の言い分にマキシーンがぼそりと呟いた。
キーナンはアーダルベルト番長に近寄り話し掛けた。
「番長とジュリアさんも来てたんですか。御2人はここで何を?」
「俺達はここの食堂で飯でも食っていこうと思ってな。でも今日は店閉まってるから別の所に行こうとしてただけだ」
「そうですか。俺もマキシーンに妹を送り届けた事ですし、もう失礼しますね」
アーダルベルト番長達がこの場から離れようとした瞬間、外が騒がしかったせいかここの食堂で働くおばちゃんが出てきた。
「あらヤダ、マキシーン君のお友達の番長さんにキーナン君じゃない。久しぶりねー。今日はわざわざ凄いべっぴんさんまで連れて、ウチに食べに来てくれたの?」
「おばさん、久しぶりだな。そのつもりだったが、今日は特別にマキシーンと双子達だけの貸切だろ?また別の機会に食いにくるから、その時にごちそうになるぜ。もっとも、キーナンは双子達に巻き込まれただけみたいだがな」
アーダルベルト番長がおばちゃんにいつもの挨拶した後、続いてジュリアとキーナンもおばちゃんに話し掛けた。
「お忙しい所お邪魔してごめんなさい。今日は残念ですけど、また後程絶対に食べに来ますね」
「今日はこいつ等の邪魔するつもり無いんで、俺達は失礼しますね」
そう言って去ろうとした3人をおばちゃんは引き止めた。
「待って、番長さん達。せっかく来たんだからマキシーン君達と一緒にご馳走になりなよ。今日は奮発しておばちゃんの奢りだよ」
「そんな、悪いから俺達は別に良いぜ。あいつ等だけにいつも通りにご馳走してやってくれ」
「人の厚意は素直に受け取るのが礼儀じゃなかったのかい?遠慮するなんて番長さんらしくないよ。お代は本当に気にしないどくれよ」
おばちゃんはありがたい言葉に、アーダルベルト番長はジュリアとキーナンにも聞いてみた。
「ジュリア、キーナン、お前達はどうする?」
「そうね・・・・おば様のせっかくの厚意を無駄にするのも何か悪いわね。せっかくだから、今日はご馳走になりましょう?」
「そうですね、俺も番長がご馳走になるってならご一緒します」
「そうか、分かった。なら今日はおばさんに甘えて、マキシーン達と一緒にご馳走になってくか」
アーダルベルト番長がそう言ったら、ジェイソンとフレディは大喜びしていた。
「今日はマチョ達もご飯を一緒に食べてくの?やったね、フレディ」
「うん、マチョ達が一緒ならいつもより楽しくなりそうだね、ジェイソン」
「中に入って少し待ってな、皆。おばちゃんが腕に縒りを掛けてご飯を作るからね」
「おばちゃん、俺も手伝うぜ。曲がりなりにも、ここでバイトさせてもらってる身だからな。ビシビシ扱き使ってくれ」
「ありがとね、マキシーン君」
という事で、今日は6人ご馳走される事になった。
皆が食堂の中に入り、厨房に向かい掛けたおばちゃんがジュリアに話し掛けた。
「そういえば、そこのべっぴんなお嬢さんの名前を聞いてなかったね。おばちゃんに教えてくれるかい?」
「ふふっ、べっぴんだなんてお上手なおば様ですね。私の名はジュリアです」
「そうかい、ジュリアちゃんかい。良い名だね」
「ありがとうございます」
「ところで、番長さんとジュリアちゃんは随分仲良さ気だけど、2人は付き合ってるのかい?」
おばちゃんの台詞にアーダルベルト番長は『ごふんっ!』と咽こみ、ジュリアは俄かに頬を赤く染めながら同時に否定した。
「「つっ、付き合ってなんかいません///!!」」
「まぁまぁ、別に照れなくても良いじゃないか。番長さんも良い女性が見つかって良かったね。ジュリアちゃんも、番長さんみたいな良い男は中々見つからないからしっかりと尻に敷いて捕まえておくんだよ?」
おばちゃんはくすくす笑いながら厨房の中に消えていった。
今日はすっかりと食堂のおばちゃんにご馳走になってしまった。
ご馳走になった後はキーナンと別れ、またマキシーンはおばちゃんの片付けを手伝い終えてから双子達と帰る様だ。
アーダルベルト番長とジュリアはよ言うと、ジュリアを家のまで送ってる最中だった。
「アーダルベルト、ここで良いわ。送ってくれてありがとう。ご馳走になった事、また改めておば様にお礼を言いに行きましょう」
「そうだな。その・・・・悪かったな、結局俺達が付き合ってると最後までおばさんに誤解されたまんまで///」
「し、仕方無いわよ///その事は誤解を解けきれなかった私にも責任あるし。それに・・・・」
ジュリアが珍しく言いよどんだ。
「『それに』・・・何だ?」
「な、何でも無いわ!今日はありがとう、とっても美味しいお店を紹介してくれて。じゃあまたね、アーダルベルト」
「お・・・おい、ジュリア!」
ジュリアは一目散に駆け出した。
いつもより心拍数が早い心臓の部分を押さえながらこう思った。
(別に付き合ってると誤解されて嫌じゃ無かっただなんて、言える訳無いじゃない・・・・馬鹿///)
END
自分の中ではやっとアダジュリらしくなってきたかなぁ?って所です。
そしてキーナンまでも平然と巻き込む双子達でした(笑)
数名かにキーナンだけ苦労してないとご指摘をされましたので、彼もちょっとずつ苦労人に仕立て上げたいと思います。
ぶっちゃけ出来るかどうかは分かりませんが(爆)
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