戦いの始まり
「いよいよ新たな魔王陛下が眞魔国に降臨なさるとウルリーケ様に眞王陛下のお告げが下ったそうよ」
「何?それは本当かジュリア?!」
「えぇ、本当よアーダルベルト。ミレーユがそう言ってたもの間違いないわ」
ここ眞魔国に、等々新たな魔王を迎える日がやって来た。
その話題は血盟城はおろか国境付近まで知り渡っていた。
ここ血盟城にある中庭にも顎割れ筋肉マッチョアーダルベルトと、その婚約者である白のジュリアもその話題について語り合っていた。
「2人で何のお話しですか?」
そこへ2人の元にコンラッドが現れた。
「あらコンラッドお久しぶりね、」
「お久しぶりですジュリア、アーダルベルト。せっかくの逢瀬のお邪魔だったかな?」
「いや、気にするな。ついに新しい魔王が降臨すると話していただけだ」
「そうなの、名は確かあなたが名付けて「ユーリ」だったわよね。どんなお方なのかしら楽しみだわ」
素敵でお優しく何よりも平和を望む方だったらいいわね、と囁きながらジュリアはうっとりと目を閉じた。
「そういえばコンラッドはジュリアの魔力の一部を地球とやらに運んで魔王陛下の誕生を見届けてきたのだろう?どんなお方なんだ?」
「どんなと言われてもまだ生まれたばかりの幼い子供だったからね。でも美しい双黒の持ち主でとても愛らしい方だったよ」
「そうか、あの時は苦労させたな悪かった」
「ジュリアの頼みだったからね、流石に断れないし仕方ないさ」
頼みと言っても脅しに近かったけどね、という言葉は飲み込んで苦笑するしかないコンラッドだった。
・・・時は遡り・・・
「コンラッド!!」
バンって扉の音をたてながらコンラッドの元にジュリアが駆けつけてきた。
「い・・・いきなりどうしました?ジュリア」
「あなたに私の魔力の一部を託すから、それを今から地球に運んで次世代の魔王陛下を誕生させてきてちょうだい」
眞王陛下から私の魔力から次世代の魔王が誕生するというお言葉があったのよと言いながら、ずいっと魔力の一部と思われる真っ白な球体を押し付けられた。
「そんな重要な役割を何故俺に?」
グウェンやギュンターに任せた方が良いのでは?と言ったが。
「あなたの方が話しやすいし頼みやすいからよ(きっぱり)」
そんな理由で?と呆然としてしまった。
「だったら俺なんかよりアーダルベルトの方が頼みやすいでしょう?」
何て言ったって婚約者なんだから。
「だって彼は大切な婚約者ですもの///そんな事頼めないわ。それに少しの間でも離れ離れになるのは寂しいもの///」
「はぁ・・・(汗)」
ぽっと頬を俄かに赤く染めながらジュリアが惚けてしまった。
アホらしくなったので丁重にお断りしょうと思ったが・・・。
「コンラッド、あなたに拒否権なんか無いわよ。もし断ったらどうなるか分かってるわよね?(黒笑)」
まさか目の不自由な私に行けと言わないわよね?とにーっこりと寒気を感じさせる程の黒い笑顔で「ぼきっぼきっ」と腕を鳴らしながらお願いもとい脅しをされたので俺は背中に冷や汗を流しながらこくこくと頷くしかできなかった。
「そう、承諾してくれて嬉しいわ♪それじゃ早速行って来てちょうだい」
・・・と笑顔で強制的に送り出されてしまった。
こうして俺は地球にジュリアの魔力の一部を運ぶことになった。
背後から「お土産忘れないでねー」とジュリアの叫びが聞こえたのが最後だった。
・・・いきなりあれだったもんなとしみじみと思い出に浸ってるコンラッドだった。
「お話中失礼しますコンラート閣下」
1人の一般兵がコンラッドに敬礼しながら歩み寄って来た。
「何かあったのか?」
「次期魔王陛下を血盟城にお呼びする際、何らかのアクシデントによる手違いで国境付近へお呼びしてしまったとの事です。それで閣下には時期魔王陛下をお迎えに上がられるようにと仰せつかりました」
「分かった、ご苦労。すぐ出発するとしよう」
急用なので失礼と2人に頭を下げその場を離れようとした・・・しかし。
「待ってコンラッド、私も行くわ!」
「ジュリア?何を言ってるんだ国境付近は危ないから魔王陛下のことはコンラッドに任せてお前は大人しくここで待ってるんだ」
「でもアーダルベルト、あなたも来てくれるんでしょう?なら心配無いじゃない」
あなたが守ってくれるんですものとさり気なく惚けながらもアーダルベルトも一緒に行くことはジュリアの中では決定してたようだった。
だが、彼女が着いて来るとろくなことが無さそうなので何としてでも一緒に行くことを避けたかった俺は止めようとした。
「し・・・しかしジュリア、今回は遊びに行くわけでは無いんだし・・・」
「つべこべ言わずにさっさと行くぞ亀共!!」
「「は・・・はい(汗)」」
ジュリアの軍曹モード炸裂により結局は一緒に行くことになってしまった。
馬を走らせて国境付近に到着した俺達は人間達から石を投げられている双黒の少年を目撃した。
「あれは!」
「双黒?!ってことはあれが次期魔王か?コンラッド」
「ユーリ!!」
アーダルベルトの質問にも答えず、俺は一目散にユーリの元へと駆けつけ、馬から降り彼を背後に匿った。
「止めろ!!これ以上この方を傷つけようとするならただじゃ済まさない。死にたくなければ散れ!!」
無駄な戦いは好まないがユーリを傷つけようとするなら話しは別だ彼を傷つける事は許さない!!
人間達に睨みつけたら「ひぃっ・・・」っと皆散って行った。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫、助けてくれてありがとう」
ハニカミながらお礼を言って顔を上げてくるユーリを見た時、俺はあまりの美しさに息を飲んだ。
幼い頃の彼も愛らしい姿だったが、15年振りに拝見した彼の姿がまさかここまで美しく成長しているとは思わなかった。
漆黒のさらさらした髪の毛、黒曜石と思わせるような黒い瞳、そして母親ゆずりの愛らしい顔、一目見た彼に心から惹かれたコンラッドはもはや声が出なかった。
「おいっ、コンラッド」
アーダルベルトの声によって俺は我に返った。
「この坊主が次期魔王か?」
「魔王?いや、俺は魔王なんて偉いもんじゃない平凡な高校生で・・・」
とユーリが話してたが、ジュリアの乱入によりユーリの言葉は最後まで発せられなかった。
「初めましてユーリ陛下、お初にお目に掛かりますフォンウィンコット卿スザナ・ジュリアと申します。いきなりこんな所に来られて混乱なさってるでしょうから一先ず安全な所へ、そこで詳しい事を説明いたします」
普段とは打って変わった態度と笑顔であっさりと主導権を奪われてしまった。
「坊主ジュリアに気に入られたようだな、俺はフォングランツ卿アーダルベルトだ。アーダルベルトと呼んでくれよろしくな」
「は・・・初めまして渋谷有利です。えっと、ジュリアさんにアーダルベルト・・・あんたは?」
「俺の名はウェラー卿コンラートです」
「コンラー、コンラット?」
「発音しにくければコンラッドで構いません。実際、知人はそう呼びますから」
「コンラッドな、よろしく」
俺に向けてくる笑顔がとても美しく、愛らしくて思わず見惚れてしまった。
無礼ながらもその笑顔を俺だけに向けて欲しいと願ってしまった。
「コンラッド、長居は無用よ。陛下を早く安全な所へ」
もう少しユーリと話したかったがジュリアの言うとおりにしないと後々面倒だし、確かにここは危険なので一先ずは言うとおりに彼を安全な所へ案内する為に移動した。
そうして俺達はユーリに一通りの説明を終えた。
ユーリの出生の事、俺が地球でユーリの誕生を見守った事、俺がユーリの名付け親になった事、そして眞魔国の事。
始めは信じられない様子だったユーリもどうにか納得してくれて今はゆっくり休んで眠っている。
彼の寝顔を見ていると穏やかな気分になって、とても愛おしく感じる。
「あら、寝ちゃったのね?」
「あぁ、今日は色んな事があったからお疲れになったのだろう」
「新しい魔王陛下は素敵な方ねお顔が拝見できないのが残念だわ」
「実際に見えなくてもどんな表情かはジュリアには分かるんだろう?」
「えぇ、コンラッドの今の表情も手に取るように分かるわ。あなたは今とても穏やかな顔してる。守るべき者、そして何よりも大切な人を見つけたようね」
ジュリアの言葉に俺は目を見開いた。
何故、彼女にここまで先を読まれてしまうんだろう?
初めてユーリを見た時、赤ん坊の頃の彼の無邪気な笑顔にどうしようもなく惹かれた。
美しく成長した彼の笑顔を見てもあの頃と変わらない、無邪気で汚れを知らないそんな笑顔に俺は惹かれた。
そして必ず俺がこの笑顔を、彼がいつまでも笑っていられるように俺の命に変えても守ろうと思った。
「あぁ、この方は必ず俺が守る!」
「でも、手を出すんじゃないないわよ。口にしなくても分かる、あなたユーリ陛下に惚れたでしょう?」
「な・・・何を根拠にそんな・・・」
「女の勘よ(きっぱり)」
ジュリア・・・・先を読みすぎです。
「何故ユーリに手を出してはいけないんだ?!ジュリアにはアーダルベルトがいるだろう?」
「何言ってるの、彼は私の魔力の一部の力で誕生した言わば我が子当然のようなもの。みすみすあなたの様なへたれに渡せるわけ無いでしょう!」
へたれって・・・・(汗)
ともかく一番敵に回したくない相手を回してしまったようだ。
「というわけで今夜コンラッドはアーダルベルトと一緒に寝てね。私は陛下の貞節を守る為にここで寝るから」
「思いが通じ合ったならともかく、魔王陛下に不埒な事するわけ無いだろう!」
「ふーん、通じ合ったなら手を出すのね?」
しまった、言葉のあやとは言え失言してしまったと口を押さえたがもう遅かった。
「とにかく、私は陛下と同じ部屋で寝るからコンラッドはあっちの部屋でアーダルベルトと一緒に寝てね。こっちに来たら分かってるわよね?(黒笑)」
寒気を感じる黒い笑顔付きの「ぼきぼき」と腕を鳴らすという以前とまったく同じ脅しをされ、承諾するしかなかった自分に泣きたくなった。
「これくらいでは諦めきれるか、必ずユーリを俺に振り向かしてみせる!!」
コンラッドとジュリアの壮絶なる戦いの幕が今始まったようだ。
「どうでもいいけどお前等の面倒事に俺を巻き込むなよな・・・(汗)」
というアーダルベルトの台詞が最後に聞こえたとか聞こえなかったとか。
すいません、調子こき過ぎました(土下座)
途中から管理人にも何を書いてるか分からなくなりました。
一度は書いてみたかったコンVSジュリ(書いてみたかったんかい)
ギャグを目指したつもりなんですが、はたしてこれでギャグになってるんでしょうか?
続きや続編の要望があるか、気が向いたらまた執筆するかもしれませんが・・・
多分そんな要望は無いでしょうね。
何故ユーリが最初から魔族語が通じるかはスルーしちゃってください。
なにせパロディですから(笑)