衝撃の真実!今明かされる顎割れの真相
「アーダルベルト、何で本気で掛かってきてくれないの?と言うか、何で私に1発も拳を入れようとしないの?」
「俺にジュリアを殴れる訳無い!惚れた女を本気で殴り掛かりにいける奴が何処にいる!?」
ここに惚れた男を本気で殴った事のある女が目の前にいますが。
「私はあなたと本気で拳闘の手合わせを願いたいの。これは争いじゃ無い、組み手なんだからそんなに深刻に考えないで本気で掛かってきて」
「組み手とはいえお前に怪我を負わせない保障が何処にある?俺はお前が何よりも大切に思ってる、だから傷つけたくなど無い!」
「・・・・っ!解ったわ、もうあなたには頼まない。本気で掛かってこない相手と手合わせしても意味無いものね」
ジュリアはアーダルベルトの言葉に俯いてしまった。
そんなジュリアに近付いて、肩にそっと優しく手を添えたアーダルベルト。
「ジュリア・・・・すまない」
「いいのよ、アーダルベルト。でも・・・・・」
「んっ?」
「1発殴らせて!」
『ドコォ!』っと強烈な鉄拳でアーダルベルト殴り飛ばして、ジュリアはその場を立ち去ってしまった。
アーダルベルトの馬鹿!何が私を『大切に思ってる』よ。
私の事を思ってくれてるんだったら、私の気持ちを悟ってよ・・・・アーダルベルト。
「どうしたの?ジュリア、随分御機嫌斜めの様ね」
「ミレーユ・・・・」
「何かあったの?さっきまで機嫌良さそうだったじゃない。アーダルベルトは一緒じゃないの?」
「知らない!アーダルベルトなんか」
はは〜ん、さてはアーダルベルトと喧嘩でもしたわね。
「どうせアーダルベルトと喧嘩でもしたんでしょう。で、喧嘩の原因は何なの?まぁ、言いたく無いんだったら無理には聞かないけどね」
「別にそんなんじゃ無いわよ。ただ・・・・拳闘の組み手をアーダルベルトに頼んだんだけど彼、本気で掛かってきてくれないのよ」
「アーダルベルトらしいわね」
「彼が以前、弓矢の事でミレーユに尋ねてた時は構え方や的の仕留め方については本気で取り組んでたのにね・・・・」
アーダルベルトも拳闘を身に着けてくれれば、急所の入れ方や鉄拳の真髄について語りあえるのに・・・・。
「もしかして、私に嫉妬?」
「そ・・・そんなんじゃないわよ///ただ組み手に応じた以上、真剣に取り組まないと相手に失礼だと言いたいだけよ!」
そう言いながらも、ジュリアは頬を赤く染める。
「照れない照れない、邪魔者は退散するから2人で腹割って納得のいくまで話し合ってみたら?」
ねっ?アーダルベルト。
アーダルベルトの頑丈さは魔族1倍だけあって、ジュリアの鉄拳を受けても復活が早い。
殴り飛ばされても短時間で復活し、直ぐジュリアの後を追ってきたのだった。
ミレーユは気を利かして、この場から姿を消した。
「アーダルベルト・・・・」
「ジュリア・・・さっきはすまなかった」
「私の方こそ、いきなり殴ったりしてごめんなさい・・・・」
2人は自然と謝罪の言葉が出た。
「その・・・・さっきジュリアとミレーユが話してた事なんだが、俺とミレーユに嫉妬したって本当なのか?」
「・・・・そうかもしれないわね。あなたとミレーユが弓矢の鍛錬した時は楽しそうに語り合ってたのに、私と拳闘の組み手をする時なんか私に当てない様に気を使ってばかりで全然楽しそうじゃないんだもの」
「それはお前を傷つけたく無いからで・・・・・」
「解ってる!でもね、その気遣いが返って人の心を傷つける事もあるのよ?私が拳闘の組み手にあなたを誘うのは、それだけアーダルベルトの事を信用してるって事よ」
誰でも平気で組み手に誘ってるって訳じゃ無いんだから。
「それにね、拳や蹴りが1発や2発入ったくらいで私がそう簡単に倒れるとでも思ってる?逆に数倍返しで返り討ちにしてやろうって燃えるわよ」
「ジュリア・・・・」
「だからね、あなたとは本気で手合わせしてみたい。いつかあなたとミレーユが楽しそうに弓矢の鍛錬してた様に、私だってあなたと楽しく拳闘の鍛錬をしてみたいの」
「・・・・解ったぜ!お前の気持ちに気づいてやれなくてすまなかった。今から俺と拳闘の組み手をしてくれるか?勿論、手加減は一切無しだ」
「勿論よ、私の気持ちを解ってくれてありがとうアーダルベルト。それじゃあ、さっそく始めましょうか?」
「あぁ、いつでもいいぜ」
こうして、私とアーダルベルトは心行くまで拳をぶつけあった。
彼の拳は今まで手合わせした者達より重くて力強かった。
やはり私の見込んだとおり!アーダルベルトは良い拳してるわ。
そうでなくちゃ私の旦那は勤まらないわね。
何て素敵、私達は拳で愛を語り合う事も出来るのね。
ジュリアはこんなにも楽しいと思った組み手は初めてだった。
この楽しいひと時に酔いしれ・・・・・・
すぱーん!!
「うぉ!?俺の顎が!!」
つい、いらん物を手刀でぶった切ってしまいました。
「・・・・という訳なんです」
「・・・・・アーダルベルトもジュリアさんと喧嘩した事あったんだ」
「突っ込み所はそこなんですね」
というより、俺は何処から突っ込んでいいのか分からない。
ジュリアさんの素手は立派な凶器と化す事もあるのか・・・・・。
「アーダルベルトも顎を治療しようとはしなかったんだ」
「私も彼の顔見た時びっくりして思わず治そうか?って言葉が出ましたよ。でも・・・・・」
『この傷はジュリアとの絆が深まった日の記念であり、ジュリアが俺にくれた勲章だ。消すなど勿体無い!』
「・・・・だそうです」
「ジュリアさんとアーダルベルトってある意味、大物カップルだったんですね」
でも・・・・、ジュリアさんがアーダルベルトを怒った気持ち分かる気がする。
ミレーユさんに嫉妬したというのも確かにあったかもしれないけど、ジュリアさんはアーダルベルトに対等で渡り合ってほしかったんじゃないかな?
俺もコンラッドが気を使って過保護にしすぎるから、つい怒ちゃったんだよな。
いらん世話まで焼かれるから、俺ってとんでもなく子供に見られてる気がしてくやしかったんだ。
でも怒ってばかりじゃ解決しない、俺もジュリアさん達の様に腹割って話し合うべきだよな?
「ミレーユさん、俺もコンラッドと話し合ってくる」
「それが良いですね。何だったら、陛下もコンラートに勲章の1つか2つ与えてきたらどうですか?」
「俺はジュリアさんの様に拳で語れない。だから俺達流でキャッチボールで語り合う事にするよ」
「ふふっ、それが1番良さそうですね」
「うん、俺さっそくコンラッドをキャッチボールに誘ってくる」
「はい、どうぞ楽しんで来てください」
その日、護衛とキャッチボールで腹を割って語り合った魔王陛下は、彼に立派な勲章を与えたかどうかは謎である。
END
以上、アーダルベルトの顎割れ真相でした。
「衝撃」とタイトルつけておきながら全然衝撃じゃ無い様な気も・・・・
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