必勝!脅威のリターンマッチ
「なぁ、ジュリア」
「なぁに?アーダルベルト」
「俺達は羽根突きをしてるだけだよな?」
「えぇ、そうよ。それがどうかした?」
「いや、何でも無ぇ・・・・」
そう、俺とジュリアはただの羽根突きの勝負をしていただけだった。
それが何故か真剣勝負の命がけになってる気がするのは俺の気のせいか?
そもそも何で俺がジュリアと羽根突きをやっているかと言うのは、正月の暇つぶしにただ外をぶらぶらしていた俺を偶然にジュリアが見かけて、ジュリアの親戚の坊主の家の場所へと連行されたからだ。
坊主の家に着くなりジュリアは、『せっかくのお正月なんだし一緒に羽根突きでもやりましょうvv』と俺に言ってきた。
まぁ、どうせ暇だったし羽根突きくらいなら気楽にやるかと思っていた。
だが、どうやら俺の考えが甘かった様だ。
「手を抜こうとか考えないでね、アーダルベルト。私は文化祭で決着が着けらなかった勝負を、この羽根突きで着けるつもりよ。だから羽根突きと言えど本気で行くわよ!」
そう言ってジュリアは俺に羽を撃ってきた。
いきなりの事で俺は羽を打ち返せなかった。
打ち返せなかった羽は俺の顔面真横すれすれで通り過ぎて、今はコンクリートの塀にめきっとめり込んでいる。
ジュリア・・・・お前は俺を殺る気か?
と言うか、お前は女なのにどんだけの力を持ってるんだ?
俺の苦労も知らずに、ジュリアの親戚の坊主が呑気に応援していて何故かコンラッドも一緒にいた。
「ジュリアさんもアーダルベルトも頑張れー」
「ジュリア、ユーリは俺が付いてますから心置きなくアーダルベルトとの勝負に励んでください」
ちゃっかりとユーリの肩を抱くコンラッド。
この後ジュリアにどんな制裁が待っているかも知らずに、全く懲りない男であった。
とにかく、ジュリアが真剣に俺と勝負したいと言うなら俺はそれに応えるしか無ぇよな。
他の奴が聞いたらたかが羽根突きで大人気ないと馬鹿にする奴もいるかもしれないが、ここで手を抜いたり本気で取り組まなければジュリアに失礼だ。
ジュリア、お前がその気なら俺もやってやるぜ!
「行くぜ!ジュリア」
「いつでも良いわよ!アーダルベルト」
全力全身、正々堂々の真剣羽根突き勝負の幕を開けた。
ジュリアが1点取ればアーダルベルトも1点取り返す。
2人は冬の寒さも忘れる程熱くなっていて白熱のバトルを繰り広げていた。
互いの攻撃手順も読めてくる様になれば羽根突きのラリーが延々と続く。
「ジュリアさん凄ごい!あのジュリアさんに互角に戦えるアーダルベルトも本当に凄いな!コンラッド」
「そうですね、あのジュリアと対等に渡り合えるのはアーダルベルトしかいないでしょう」
「そうかもな。ジュリアさん、コンラッドの所の高校に転校してから毎日が本当に楽しそうなんだ。話しを聞いてる俺まで楽しくなってくるくらい」
「ユーリはどんな話しをジュリアから聞くんですか?」
「大体はその日にあった出来事とかだよ。それで話しに出てくるのはアーダルベルトの事が多いんだ。勿論、コンラッドの事も色々と聞いてるよ」
「そ・・・そうですか(汗)」
ユーリはコンラッドにとってのでっかい爆弾発言をさらりと落とした事に気づいて無い。
ジュリアからどんな話しを聞いてるのかユーリに問うのが恐いコンラッドであった。
「なぁ、コンラッド。ジュリアさんとアーダルベルトって付き合ってるのかな?」
「あの2人が互いにどう想ってるか俺には分かりませんが、付き合ってはいないみたいです。でも、とても気の合う2人だと思いますよ?」
「そっか、コンラッドもそう思うんだ。ジュリアさんってさ、アーダルベルトに対しては本音でぶつかってる様に見えるよな。本音でぶつかるのってかなり気の許せる相手じゃないと出来ないだろ?だから、ジュリアさんは本当にアーダルベルトを信頼してるんだなって思ったんだ」
「そうですね」
もし、ジュリアがアーダルベルトに恋してくれたら少しは俺がユーリに対する想いも分かってくれるだろうか?
願わくばジュリアも恋心という物を少しは理解して、俺とユーリの仲を邪魔しないでほしい・・・・(涙)
コンラッドは心の中ではらはらと涙を流しながら切実にそう思っていた。
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・な、中々やるなジュリア」
「はぁ・・・はぁ・・・アーダルベルトもね」
お互い引けを取らないアーダルベルト番長とジュリア、長時間続いた羽根突きで息が上がっていた。
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・2点先取勝利じゃキリが無ぇな」
「はぁ・・・はぁ・・・そ、そうね。こうなれば1点先取した方が勝者という事にしない?」
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・それでいいぜ」
最初に決めたルールは2点以上離した15点先に取った方が勝ちという事だった。
つまり、先に15点取れても14対15だったら後1点は取って14対16とかにならないと勝てないルールである。
しかし、同点が続く中いい加減にキリが無いので後1点先に取った方が勝者という事にした。
「くしゅん!」
ユーリが突然くしゃみをした。
「大丈夫ですか?ユーリ。寒くなってきましたし、俺達は先に中に入ってましょうか?」
「うぅん、大丈夫。2人の勝負の決着を見届けたいからさ、もう少し見てるよ」
「風邪を引かれます!勝負の決着でしたら俺が見ますから、ユーリは中に入ってください」
「大丈夫だって、コンラッドは心配性だなー」
「そうですか、なら・・・・」
コンラッドは自分が着ていたコートをユーリにも掛けて、互いに寄り添って掛け合う形となった。
そしてコンラッドはユーリににっこりと微笑みながら言った。
「こうすれば寒くないでしょう?」
「なっ///これはちょっと恥ずかしくないか?コンラッド」
「俺は恥ずかしくないですよ?この寒い中、出歩いてる人は少ないですしじろじろ見られる心配はありませんよ」
「そ、そりゃあそうだけどさ///」
恥ずかしいのか、顔を赤らめながらユーリは俯く。
そんなユーリを見てコンラッドは『可愛いvv』と思っていた。
「あっ!コンラッド、避けろ!!」
「はい?」
ヒュッ・・・・ドコォッ!!
羽根突きの羽がコンラッドの方へと飛んできて顔面にクリーンヒットした。
「ご・・・ごめんなさい、コンラッド。私ったらつい手元が狂ってしまったのよ」
コンラッドに素直に謝罪するジュリアだが心の中ではこう思っていた。
『ユーリちゃんに馴れ馴れしすぎるわ、ボケ!!』
「おい、大丈夫か?コンラッド」
そういやあ、さっきジュリアが羽を打った時はコンクリートの塀に羽がめり込む程の威力はなかったか?
「コンラッド、しっかり!・・・あれ?羽がこっちまで飛んで来たって事は、ジュリアさんが打った羽はコートの場外に出たって事だよな?という事は、アーダルベルトに1点が入ったって事で・・・・」
つまり・・・・
「この勝負、アーダルベルトの勝利って事ね。さすがね、完敗だわ」
「こんな決まり方で良いのか?ジュリア。これじゃあすっきりしねぇだろうが」
「すっきりしないも何も、負けは負けよ。潔く認めるわ。でもね、またリベンジを申し込むつもりだから覚悟しといてね?アーダルベルト」
アーダルベルト番長とジュリアは互いに不敵に笑い合いながら言った。
「望むところだ、いつでも受けてやるぜ!」
アーダルベルト番長とジュリアを見守るユーリも微笑ましく思っていた。
「やっぱりスポーツって良い物だよな。なっ?コンラッド・・・・って、ん?」
返事は無い。
やはりさっきぶつけられた羽の威力が凄まじかった様だ。
「わわっ、忘れてた!コンラッド、気をしっかり!ジュリアさん、俺コンラッドを部屋で休ませて来るよ」
「分かったわ、ユーリちゃん。もし良かったら台所を借りても良いかしら?コンラッドに羽をぶつけてしまったお詫びに暖かい紅茶を煎れてあげたいのよ。勿論、ユーリちゃんとアーダルベルトの分もね」
「はい、お願いします。アーダルベルト、悪いけどコンラッドを運ぶのを手伝ってもらっても良いかな?」
「あぁ、良いぜ。坊主はコンラッドの足側を頼むな」
「うん、せーの・・・っと」
こうして、コンラッドはユーリの部屋へと運ばれたのだった。
その後コンラッドは普段ジュリアからボコられている賜物か、部屋へと運び込まれてから直ぐに復活を遂げたのでした。
END
今回はアーダルベルト番長の記念すべき(?)初勝利です!
また、ジュリアからのリベンジ戦があるかはアーダルベルト番長とジュリアのみが知る。
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