ライバルは忘れた頃に現れる
「やっと日本に到着したか・・・・。この地に足を着けるのも久しぶりだな」
そう呟きならがら空港から出てきた1人の少年がいた。
さらさらと金色の髪の毛を風になびかせ凛々しく立っていた。
そして、すれ違う通行人達の視線は一挙少年に向けられた。
何故なら、その少年はそんじょそこらのアイドル顔負けの美少女顔だったからである。
さて、場所を変えてアーダルベルト番長とゆかいな仲間達が通う血盟学園は、一見親子に見えない学園長である母親とその息子が戯れていた。
「コンラート、聞いて聞いてvvvv」
「母上・・・・今日の授業はまだ全部終わっていないんですよ?プライベートならともかく学校がある日くらいは親子とは言え母上は学園長、俺は生徒である事の立場を弁えてください」
「あんっ、今は休み時間なんだから硬い事は言いっこな・し・よvvそんな事より、私の話しを聞いてちょうだい」
コンラッドは溜息を吐きながら聞いた。
「はいはい、分かりました。・・・・で、どしたんですか?母上」
「今日はアメリカへ留学していたあなたの弟、ヴォルフが帰って来る日なのよーvvvv」
「えっ、ヴォルフラムがですか?いつの間にこっちへ帰って来る事になってたんです!?」
「1ヶ月くらい前にヴォルフから連絡があったのよ。言ってなかったかしら?」
「初耳ですよ!でも・・・・そうですか、ヴォルフラムが。懐かしいですね」
「えぇ、本当に。中学生に上がるのと同時に留学ですものね。そんなヴォルフも、もう高校生ね・・・・。あの子、どれだけ成長したのかしら?」
「それは会ってからのお楽しみですね。何時頃こちらに到着する予定なんですか?」
「もうそろそろ到着する頃だと思うわ。ここで落ち合う事になってるのvv」
ツェリ学園長のご子息にてコンラッドの末の弟であるヴォルフラム。
2人共彼の帰りがとても楽しみな様であった。
話しを例の金髪美少女顔した少年の方へと戻そう。
少年は何処かに向かってる様だったが、何故かイライラした様に1人愚痴をこぼしていた。
「何なんださっきから一体!軟弱そうで貧相な男共にお茶や食事など、何故この僕が誘われなくてはいけないんだ!?」
そうなのだ、先程から少年はその容姿のせいか頻繁に男からナンパされていた。
当然、少年にはその様な輩には興味の持つという可能性は砂の粒程も可能性も無い。
あまりにしつこい不貞の輩にはしっかり制裁を加えて追い払っていたのでした。
しかし、相変わらずナンパが尽きる事は無かった・・・・。
「よぉ、姉ちゃん可愛い顔してるな。少し俺と付き合わねぇ?」
またもや少年にナンパしに来た男がいた。
何度も起こる似た様なパターンに少年はもはや溜息しか出なかった。
「はぁ・・・・またか」
少年はうんざりした様にぽつりと囁いた。
もうこの際無視しようと決めた少年は、男の言葉など聞かなかったフリして行こうとした。
「姉ちゃん、無視は酷いんじゃない?少しで良いからさー、俺と付き合ってよ」
男が少年の腕をぐいっと引っ張る。
「五月蝿い、僕に気安く障るな!貴様の様な下賤の男は、そこいらを飛んでる虫でも相手してろ!もっとも、虫でも貴様を相手にするかどうかは話しは別だがな」
そう言いながら男の手を少年は振りほどいた。
少年の言葉に男はカチーンとした。
「てめぇ、人が下手に出てりゃあ良い気になりやがって!」
「ちょっと・・・」
少年に乱暴な行為をしようとする男を呼び止めた者がいた。
「いきなり乱暴は良く無いんじゃない?さっきから見ていた限り、あんたの方がその人にしつこそうだったしな。断られたなら、潔く諦めたら?」
「あんっ?」
男は呼び止めた人の方へと向いた。
そこにはジュリアの子分その1と化してるコンラッドが一目惚れしてから愛して止まない、髪と目と共に綺麗な双黒を持つユーリがその場に立っていた。
「何だお前は?野郎に用は無ぇ、すっこんでろ!」
「あんたこそいい加減にしろよ!情けない、同じ男として風上にも置けないな」
「なんだとぉ!?」
すっかり逆上したナンパ男はユーリに近付いた。
「生意気なガキだな!ガキはガキらしく大人しくおねんねしてな!!」
男がユーリに殴り掛かろうとした。
しかし・・・・
ドカァ!!
ドサ・・・・
男に背後から何らかの衝撃が来て、ユーリを殴る前にその場に倒れてしまった。
「ふんっ、他愛も無いな」
金髪美少女顔の少年はいつの間にか竹刀を構えながら凛々しく男の背後へ立っていた。
少年はユーリの方へと顔を向け、近付いて来た。
「大丈夫か?」
「えっと・・・ありがとう。助けようと思ってたのに、逆に助けられて情けないな俺も」
ユーリは何も出来なかった自分に居た堪れない様で苦笑していた。
「全くだな。へなちょこ風情が僕を助けようなどと100年早い」
少年の言った言葉にユーリはカチンとした。
「あのな、仮にも助けてくれようとした恩人にその言い草は失礼じゃないか?せっかく綺麗な顔した女の子なんだから、もう少し優しく言えないのかよ!?」
「貴様の目は節穴か!?僕は正真正銘の男だ!!」
「へ・・・・お・・・おと・・・男ぉぉぉっ?!」
嘘だ・・・・こんなアイドル顔負けの美人な子が男だなんて?!ユーリは密かにそう思った。
しかし、張本人が男と言うからには本当の事なのだろう。
「マ・・・マジで?」
「本当だ。貴様の様なへなちょこに、僕が嘘など言ってどうする?」
「ですよね〜・・・・」
ユーリは唖然として立ち尽くしていた。
「生憎、貴様に構ってる暇は全く無い。僕はもう行くぞ」
「う・・・うん・・・」
そう言った後、ユーリは少年の背後に目を見張った。
先程に倒した男が復活して、少年に襲い掛かろうとした。
「調子こいてんじゃねぇぞ、てめぇ等!!」
少年が男の気配に気づいたのが少し遅かった。
襲い掛かってくる男を迎え撃つのにも1歩遅かった・・・・。
ドコォ!!
少年は殴られると覚悟をしたのも束の間、少年を庇って代わりにユーリが腹部を殴られていた。
「ぐぅ・・・・」
ユーリは腹を押さえて苦しそうに呻きながら膝を地面に着いた。
「おい、お前!!大丈夫か!?」
「てて・・・・だい・・・じょうぶ」
多少無理してユーリが少年に笑い掛ける。
そんなユーリを見て男は不敵に笑い出した。
「弱いくせに無様だな。そっちの姉ちゃんもこいつと一緒に這いつくばってな!」
男の拳が再び少年へと飛んできた。
「貴様・・・・僕を本気で怒らすとは良い度胸だな」
少年はそう呟きながら男の拳を竹刀で受け流し、そのまま頚動の辺りに多少力を加えて竹刀を当てた。
そうすると男は完全に気を失ってしまい、再度その場にドサリと倒れた。
その直後、何事も無かったかの様にユーリの方へ歩み寄った。
「立てるか?またこいつの目が覚めると面倒だから、今の内に場所を移動するぞ」
「う・・・・うん」
ユーリはよろめきながら立ち上がり、少年と共にこの場を離れた。
ある程度離れた人気の無い場所まで来たら、ユーリが呟いた。
「あの人、あの場に置いたままで大丈夫かな?」
ユーリのその言葉に少年はイラただし気に言った。
「お前は本当にへなちょこだな!!僕達に危害を加えようとした下賤の輩を心配するなど、お前みたいなへなちょこ以外にいないぞ!」
シュンとユーリは顔を伏せた。
少し言い過ぎたと思った少年は、少しだけフォローをした。
「何、運良く人が通り掛かって介抱されれば大丈夫だろう。少なくとも、あの程度の衝撃で死ぬ様な軟弱者には見えなかったからな。お前の様なへなちょこの心配など無用だろう」
「へなちょこ、へなちょこ連発するな!俺の名は渋谷有利という立派な名前があるんだからな!」
「何だ・・・名前もお前と同じでへなちょこっぽいな」
少年の言葉にカチンとしたユーリは反論しようとした。
「おい・・・・」
「しかし、お前の見た目と同じで可愛らしい名だとも思うぞ。ちなみに、僕の名はヴォルフラムだ」
いきなり少年が微笑むからユーリは不覚にも頬を赤らめてトキめいてしまった。
「可愛いって言うなよ///」
「何だ、僕に可愛いと言われて照れているのか?ユーリ。可愛い奴だな」
「だから可愛いっつうな!///。大体、可愛いのはヴォルフラムの方だろ。お前の綺麗な顔につい目が行ったから、しつこい奴に付きまとわれるてろのを見掛けたんだぞ?」
「そうなのか?」
「そんな綺麗な顔を傷つけさせる訳にはいかないと思ったんだよ。でも、見た目とは裏腹に結構キツイ性格してるよな、ヴォルフラムって」
「なっ・・・・?!へなちょこユーリに言われたくない!」
「でも、その気の強い性格も俺は嫌いじゃないけどな」
ユーリがヴォルフラムに向かって微笑みながら言った。
すると、今度はヴォルフラムがユーリの可愛らしい笑顔に頬を俄かに赤く染めながらトキめいた。
「そ・・・そうか///ユーリもへなちょこのわりには僕を庇ったりして、中々見所あるな」
「へなちょこ言うなって言ってるだろー!!」
ユーリの叫び声が木霊の様に反響したのだった。
一方、コンラッドとツェリ学園長はと言うと・・・・・
「むっ・・・・(ぴくり)」
「あら、どうしたの?コンラート」
「いえ、俺の大切な想い人に悪い虫がくっ付いた様な気がしまして・・・・」
「まぁ、コンラートに大切な想い人?今度、是非紹介してちょうだいねvv」
コンラッドの嫌な予感を感じ取る中、ツェリ学園長は『大切な想い人』という台詞に反応して、論点がずれて1人はしゃいでいた。
残念ながら、『1番悪い虫はあんただよ・・・・』っとコンラッドに突っ込みする者はこの場にいなかったのでした。
END
登場させたいと思いつつ、中々登場させられなかったヴォルフの登場しました!
やっと念願が1つ達成出来て嬉しいですvv
その内にグウェンやアニシナも登場させたいと思ってます。
return