転校して来たお嬢様
アーダルベルト番長と、女性にしてはかなり強者ジュリアが運命的?な出会いをしてから数日後の事。
彼女の元へ1人の好青年風の青年が現れた。
「ジュリア、遅れてすまな・・・・」
「来るのが遅い!!(怒)」
ドコォッ!!
「私との約束の時間に1分35秒も遅れるとは何事か!?遅れるなら遅れるとあらかじめ連絡せぬか、馬鹿者!!」
出会ってからいきなりジュリアに殴られた青年、完全にのびきってしまってもはや彼女の怒声も聞こえてない。
そんな青年を問答無用でジュリアは叩き起こす。
「コンラッド、そんな場でいつまでものびてないでさっさと本題に入るぞ、この亀!!」
ジュリアが殴った相手、それはコンラッドことコンラートという名の青年。
昔から互いの両親が仲良しという関係で、2人は子供の頃からの付き合い。
いわば幼馴染である。
それはさて置き、今回ジュリアはコンラッドに用があるという事で彼を呼び出したのである。
「全く、少し遅れたぐらいでいきなり殴ってこなくても・・・・」
「何か言った?」
「いいえ、何でもありません」
人を呼び出しておいて、少し遅刻したくらいでいきなり殴られるなんて、そりゃあコンラッドでなくても愚痴の1つや2つは言いたくなる。
しかし、コンラッドの愚痴もジュリアはひと睨みの問答無用で黙らせる。
昔から彼女に逆らえないコンラッドは、この件に関しては自分の身の為にもこれ以上何も言わない方が賢明だと判断し何も言わなかった。
「それより俺に用件があるそうですが、一体何の用ですか?ジュリア」
「その事なんだけど、あなたの剣道の腕を見込んでボディーガードを頼みたい子がいるのよ」
コンラッドの父親は剣道の有段者で、剣道道場の師範を勤めている。
コンラッド自信も幼い頃から剣道を父から習っていた為、剣道の腕ならそんじょそこらの学生相手に引けをとらないのであった。
「ボディガードならジュリアの方が適任だと思いますけど・・・・」
むしろジュリアがいれば、俺の手なんかいらない様な気も・・・・。
「勿論、全面的にコンラッドに任せる気は無いわよ。基本的には私がボディガードするつもりだけど、あなたにはその手助けをお願いしたいの」
「つまり、あなたの協力をしろという事なんですね」
「そういう事、珍しく物分りがいいじゃない」
「はぁ・・・・」
正直面倒くさいが、ここで断ったらまた殴られて脅されるんだろうな。
『昔からそうだったもんな』としみじみ過去の悲惨な思い出に浸っているコンラッドだった。
「分かりました、引き受けましょう」
「ありがとう、コンラッドならそう言ってくれると思ってたわ」
「・・・・それで、何処の誰をボディガードすればいいんですか?」
「私の遠い親戚の子よ、とっても可愛い男の子なのvv」
私のお気に入りの子なんだから、コンラッドでも手を出したらぶっ飛ばすわよ。
「男の子でしたら自分の身くらい自分で守れるでしょう?」
「それがそういう訳にもいかないのよ。もっの凄く天然で鈍感で自分の魅力に無自覚な子だから、その子の父君と兄君が常日頃大層心配なさってるのよ」
「はぁ・・・・」
ジュリアの親戚自慢は、まだまだ続く。
「その子がいつ誘拐とかされてもおかしくないから、私も本っ当に心配なのよ。過去にもどこぞの変態に攫われそうになったんだけど、私がその場にいたから奴を叩きのめして
何も事が起きずに済んだんだけどね」
成長してからますます可愛さに磨きが掛かってきたから、私も家族の方々も余計に心配なのよ。
ジュリアに叩きのめされるとはお気の毒に、そいつは無事に帰れ無かっただろうな。
しかし、ジュリアがここまで力説するとはどれ位可愛い子なんだ?
「そういう訳で、父君と兄君が私にその子のボディガードをして欲しいと頼まれたのよ」
親戚の私なら信頼も置けるし、何より安心だそうよ。
「それに、この町も少なからずろくでも無い奴はいそうだしね」
ジュリアは不機嫌そうな顔で囁く。
「何かあったんですか?」
「先日、1人に対して集団で相手をしていた奴等がいたのよ。全く、男ならさしで勝負しろ!ってのよ」
ジュリアの台詞に、コンラッドはぷっと吹き出した。
「何が可笑しいのよ?コンラッド」
「いやっ、すまない。俺が通ってる学校にいる番長もジュリアと同じ台詞をよく言うもんだから、つい・・・ね」
「へぇ、少しは見所ありそうな人ね。その番長って人はコンラッドと同じクラスの人かしら?」
「違うクラスだけど、クラスは隣同士で合同授業なんかではよく一緒になりますよ。気さくな人だから人気もあるし、俺にも良くしてくれるんですよ」
「そうなの、あなたの学校に行くのが楽しみになってきたわ」
「・・・・はい?」
この時コンラッドは、何となく嫌な予感がしたけどあえて『学校に行く』という意味をジュリアに聞いてみた。
「あの・・・俺の通ってる学校に行くというのはどういう意味で?」
「言葉通りの意味、私も今度あなたの学校に転校するのよ。これで堅苦しいお嬢様学校とおさらば出来るわ」
私の親戚の子もこの町に住んでるから、そうした方がボディガードもしやすいしね。
ジュリアは実はお金持ちのお嬢様である。
お嬢様という事もあり、伝統のある金持ちのお嬢様学校に通わされていたが、退屈な日々にうんざりしていた所だった。
つまり、ジュリアはボディガードの件を利用して退屈な日々に終止符を付けたのだった。
「という事で、これからよろしくお願いねコンラッドvv」
そう言ったジュリアの顔は、実に晴々とした笑顔だった。
しかし、コンラッドにとってはこれから悪夢の日々が始まる事が確定した瞬間だったのは言うまだも無かった。
・・・・・数日後・・・・・
ジュリアが言った通り、コンラッドの通う学校へと本当に彼女は転校してきた。
彼女の容姿は美人なうえ、黙っていればお淑やかな女性に見える為、瞬く間に大人気となった。
今やジュリアの席は凄い人だかりで、中々席から離れられない状況だった。
ざわざわ、がやがや・・・・
「何だ?あの人だかりは」
「知らないんですか?アーダルベルト番長」
「このクラスに美少女が転校して来たんで、皆一目見ようと集まってるんですよ」
「あぁ、そういえば隣のクラスに転校生が来るって話しがあったな。それにしても、ここからじゃよく見えねぇな。お前等はいいのか?その美少女転校生とやらを見に行かなくても」
「俺達はさっき見てきましたから」
「噂以上でかなり美人な女性でしたよ」
キーナンとマキシーンは、美少女が転校してきた事に嬉しそうだ。
「そうか、それは良かったな」
アーダルベルト番長は興味無さそうに言った。
「アーダルベルト番長も見に行った方がいいですよ」
「俺は別に興味無ぇから、遠慮しておく」
「止めとけよマキシーン、アーダルベルト番長は以前お会いしたっていう『ジュリア』って女にお熱なんだからよ」
「な・・・っ///何言ってんだよキーナン!俺は別にそんなんじゃ・・・」
「あぁ、番長に1発かましたという例の女性ですか。アーダルベルト番長も隅に置けないですね」
「だから、違うって言ってんだろ///いい加減にしろよお前等!」
アーダルベルト番長の声がジュリアの耳に入った。
(えっ?今の声、どっかで・・・・)
聞き覚えのある声に、ジュリアは急に席を立ち上がり声の聞こえた方に目を向けて見た。
その時、アーダルベルト番長とジュリアの目がばっちりと合った。
「「あ〜〜!お前(あなた)は!!」」
2人はびっくりして、思わずつい大声をあげてしまった。
「えっと、アーダルベルト番長はあの人とお知り合いで?」
「あいつが前に言った俺に1発かました女、『ジュリア』だ・・・」
END
遅くなりましたが、やっとの事でコンラッドが登場させられました。
ここでも、やはりジュリアの子分確定(笑)
ちなみに番長パロでの登場するジュリアは目が不自由という訳では無く、ばっちりと相手の姿が見えてる設定です。
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