求め合う互いのぬくもり
暑かった夏の時期が終わり、秋から冬へとだんだん寒い季節となってきた。
こう寒い日が続くと今地球に帰っているユーリの事ばかり気に掛けてしまう。
薄着で外など出歩いてはいないだろうか?体調は崩してないだろうか?
あの方はすぐ無茶をなさるから心配だ。
こんな風に心配ばかりしているとユーリはきっとこう言うだろう。
『地球は眞魔国程寒くないから、そんなに心配する事無いって。過保護だな〜コンラッドは』・・・と。
でも、やはり心配なんですよユーリ。
眞魔国にいる時は色々とお世話が出来るし、無茶な事をなさろうとすればお止めする事だって出来る。
俺の目の届く範囲にいさせたい、ずっと傍にいてほしいと思ってしまう。
叶わぬ願いとは思いつつも、ユーリがいない時はいつも願ってしまう。
ユーリには地球での生活がある事も、地球に家族がいる事も知っています。
だけど・・・・早く会いたい、会ってあなたを抱きしめたい。
あなたがいないだけで凄く寂しくて、俺の心は凍えた様な感じです。
この凍えた心をあなたのぬくもりで満たしたい。
だから・・・・早く戻って来てください、ユーリ。
「寒い・・・、もうすっかり冬だな」
地球に戻って来てから早数週間。
眞魔国にいた頃もそろそろ冬の到来かな?と思ったが、地球でも本格的に冬が到来した様だ。
地球ではあっちと違って寒い冬でも比較的過ごしやすい。
建物の中では常に暖房が点いてるし、自分の家に帰ればコタツという物もある。
他にも血盟城は建物の素材が石なのに比べるとこっちの建物の素材は木だから、例え暖房器具を使わなくとも比較的に室温が違うだろう。
だから、眞魔国にいるより地球にいた方が寒い思いをしなくても済むはずだ。
でも、何か違う。
コタツで暖まっても、暖房で暖まっても、俺が求めてるぬくもりとは違う。
眞魔国にいた時に感じたぬくもり・・・それは、こっちでは絶対に感じられないぬくもり。
そのぬくもりに包まれると何と言うか心の底から温まって、とても幸せな気分になる。
それは、コンラッドに抱きしめられた時にだけ感じられるぬくもり。
「・・・・会いたいな」
早く会って抱きしめられたい、コンラッドのぬくもりを感じたい。
コンラッドの所に帰りたい・・・・。
道端を歩いてる時にユーリは無意識に水溜りに足を入れてしまい、何故か足場から吸い込まれる様な感じがあった。
「へっ?これって、まさか・・・・」
ユーリは完全に水に吸い込まれてしまった。
「やっぱり、スタツア〜!!」
そのまま眞魔国へと向かったのだった。
コンラッドは今日の任務を全て終わらせ、自室に戻っていた。
後は休むだけのはずなのに、どうも落ち着かない。
いや・・・落ち着かないと言うよりは、待ち望んでいた事がようやく訪れた様なわくわくとした感じに近い。
まるで、ユーリが眞魔国に帰って来る報せを聞いた時みたいに。
何故だろう?ユーリがこちらにお戻りになる報せなど無いのに、もうすぐユーリに会えるような気がする。
ユーリに会える保障も無いのに、俺はいつのまにか自室を飛び出していた。
コンラッドは血盟城の中でユーリの現れそうな所色々周り、最後に中庭の噴水まで来たが彼は何処にもいなかった。
やはり俺の気のせいなのか?ユーリには会えないのか?
コンラッドは半ば諦めかけて噴水に背を向けた状態で腰掛けた。
でも、諦めたくなくて彼の名をぽつりと囁いた。
「ユーリ、あなたに会いたい。俺の元に帰って来てください・・・・」
その言葉はもはや祈りに近いようだった。
そしたら背後から急に人の気配がすると共に『ぱしゃん』と水の弾く音がした。
「っぷはぁ!う〜冷たい!!」
「・・・・ユーリ?!」
「コンラッド!」
寒さに震えてたユーリが、コンラッドと顔合わせた途端に寒さも忘れた様な感じの笑顔になる。
ユーリ、本当に本物のユーリなのか?
それとも、俺にとって都合の良い幻を見てるのか?
今、目の前にいるのが本物のユーリなのか確かめたくてもう1度名を呼んでみた。
「あの・・・・ユーリですよね?」
「当たり前じゃん、他に何に見えるって言うの?名付け親」
コンラッドはユーリを噴水から上がらせて、自分の着ていた軍服を羽織らせると同時に、その細い体を抱きしめた。
「ユーリ、会いたかった」
水に濡れて体を凄く冷えているはずなのに、コンラッドに抱きしめられると凄く暖かい。
あぁ、帰ってきたんだな俺の求めていた場所に。
こんな風にコンラッドに抱きしめられる度に実感するユーリだった。
「俺も凄く会いたかった、コンラッド」
ユーリもコンラッドの体に手を回して、抱き合う形となった。
何でここにいるのか、何で呼ばれたのか、お互い聞きたい事は色々あったけど、今はこのぬくもりに満たされていたいと2人は思っていた。
「こぉら〜(怒)ユーリ、お前って奴はまた性懲りも無くコンラートとイチャつきおってこの浮気物!!2人共さっさと離れるじゃり!!」
こんな中庭ど真ん中で抱き合ってたら人目につくという事を、ユーリもコンラッドもすっかり忘れていた。
しかも、見つかったのがよりにもよって口煩い自称婚約者。
とりあえず、言われた通りに2人は一端体を離す事にした。
「どうします?ユーリ、このままヴォルフラムのとこに行ってもきゃんきゃん騒がれるだけですよ」
「この騒ぎだと、どうせギュンターもすぐ駆けつけて来て余計にややこしくなるだろうしな〜」
コンラッドとユーリを顔を合わせ、お互い何か思いついたように不敵な笑いをした。
そして、2人同時に声を合わせて言った。
「「ここは、2人で逃げようか」」
背後で騒いでるのも気にせず、2人は手と手を取り合って馬小屋の方へと向かった。
コンラッドは愛馬のノーカンティーに跨り、ユーリを自分の前に乗せて走り出した。
「何処に行くの?」
「とりあえず俺の隠れ家に行きましょう。ユーリの濡れた体や服を乾かさなくては風邪をひいてしまう」
「コンラッド、隠れ家なんてあったの?」
「はい、1人になりたい時とかに行くんですよ。ユーリだけに内緒で教えますね」
「うん///ありがとう、コンラッド」
「寒いでしょうけど、少しだけ我慢してくださいね」
「そういえば、今回は何で俺は呼ばれたの?」
「俺も知りません、ユーリがこちらに来る報せは無かったんで」
それじゃあコンラッドが俺の現れた場所にいたのは本当に偶然?
「もしかしたら、俺がユーリを呼び寄せてしまったかもしれませんね。ユーリに会いたいとばかり思ってましたから。それに、報せは無くともユーリが帰って来るような気がしたんです」
コンラッドも俺と会いたいって思ってくれてたんだ。
コンラッドに魔力は無いけど、2人で同じ事を思ったからお互い引き寄せられて、俺の魔力が知らないうちに発動でもしちゃったのかな?
「俺も、地球にいる間ずっとコンラッドに会いたいって思ってた」
「それじゃあ、ユーリがこちらに来たのは俺達の愛の力というわけですねvv」
「恥ずかしい事さらりと言うな///」
「ユーリ、隠れ家に着いたら抱いても良いですか?あなたを感じたい」
コンラッドの発言に、ユーリを顔を赤くさせて俯きながら言った。
「いいよ///俺もコンラッドに暖めてほしいから」
コンラッドはユーリの許しを得てから、先程より早急に隠れ家へと向かったのだった。
一刻も早く、2人きりで甘い時間を過ごす為に・・・・・
END