番長、一時の休息
俺は今、学校の屋上で寝っころがりながら空を見ている。
広がった青空には、太陽の位置が丁度真上に来る頃だ。
時間帯で言うとそうだな、もうすぐ昼になるな。
他の奴等は午前中に行われる、最後の授業に出ている頃だな。
俺は時々だが授業をさぼり、こうしてぼんやりと空を眺めている。
何故、空を見るのかと言うとな・・・・空の色が好きだからって事になるかな。
ただそれだけの事なんだが、こうして空を見るのが何となく好きだ。
俺は今も好きな空の色を1人で眺めている。
アーダルベルト番長、授業をさぼり堂々と屋上のど真ん中で寝っころがる。
先公に見つかるという心配は一切せず、ある意味肝の据わった男であった。
キーンコーンカーンコーン♪
どうやら午前の授業が終わり、昼休みに入った様だ。
「んっ・・・ふわぁ・・・」
いけね、どうやらあのまま寝ちまったみたいだな・・・・
ジー・・・・・・・・・
狽ムくぅっ!!
「あっ、やっと起きたみたいね。随分とお疲れの様ね、気持ち良さそうに眠ってたわよ?」
眠っていた番長の顔を、つい先日転校して来たばかりのジュリアがいつの間にやら覗き込んでいた。
これには番長も大層驚いた。
「お前、いつからここに?」
「ついさっき来たばかりよ。以前ちゃんと名乗ったんだから『お前』じゃなくて『ジュリア』って呼んでよね、アーダルベルト」
「あぁ、それは悪かったなジュリア」
アーダルベルト番長がジュリアの名を呼んだら、ジュリアは『よろしい』と言って満足気に微笑む。
「それはそうと、あなたさっきの授業さぼってたでしょう?成績が落ちて留年しても知らないわよ」
「さっきの授業は自習だったから別にいいんだよ。成績なら授業日数が足りるのと試験でそこそこ点を取れてば何とかなるだろう」
俺はこれでも試験ではそれなりに点数を取ってるからな。
「全く、番長がこんなんで示しが付くのかしら?」
「俺は自分で『番長』を名乗ってる訳じゃ無ぇ。他の奴等が勝手にそう呼んでるだけだ・・・・って、何でジュリアがそれを知っている!?」
「ちょっとした風の噂であなたが番長だって聞いたのよ。それに、この学校に番長がいるって事は知り合いから聞いて元々知ってたわよ」
それを聞いた番長は他校の不良達に知られると色々と面倒になるので、『しばらくは何もせずじっとしてるか』っと思っていた。
過去に番長の事を聞きつけ、喧嘩売りに来た他校の不良達がいた。
当然、アーダルベルト番長の返り討ちで終わったが。
ジュリアはアーダルベルト番長の隣に腰掛け、話しを続ける。
「私ね、今まで『番長』って奴は横暴な人が多いって思っていたわ。でも、アーダルベルトは違うのね」
「ジュリアがイメージした『番長』って奴と俺はどう違うんだ?俺も結構好き勝手過ごしてるって自分でも自覚はあるんだがな」
現に、自習とはいえこうして授業をさぼってたしな。
「何て言うか番長は番長でも『正義の番長』みたいな感じかしら。集団リンチに遭ってる人とかを助けたりしてるんでしょう?」
「別に俺は正義の味方になるつもりは無ぇよ、集団で相手するってのが俺の信条に反するだけだ」
ただそれだけだ。
「大体、それ位ならジュリアも前にやってただろう?」
次にアーダルベルト番長とジュリアの声が重なる。
「「男なら正々堂々さしで勝負しろ!ってんだ(てのよ)」」
アーダルベルト番長は可笑しな顔してジュリアを見た。
また、ジュリアもくすくす笑いながらアーダルベルト番長の顔を見る。
「ふふっ、私もアーダルベルトと同じ考えよ。弱い者が強い者をボッコボッコにするのって小気味いいわよね、私そういう話し大好きなの」
それを聞いたアーダルベルト番長はふっと笑う。
「そうだな、俺もそういう小気味いい話しは嫌いじゃ無い。まぁ、以前の雄姿を見る限りジュリアは『弱い者』って感じじゃ無ぇけどな」
「当たり前じゃない、私は大人しく守られる側になるのは真っ平ご免よ」
ジュリアは握り拳で大変雄々しい姿で語る。
「拳闘で手合わせした時の拳と拳でぶつかり合うあの感覚・・・・本当に燃えるわ。相手が手強ければ手強い程、絶対に負けてなるものか!って思わない?相手が汚い手を
使う奴なら尚の事よ、そんな奴等は完膚無きまでにぶちのめすのみよ!」
そんなジュリアを見てるアーダルベルト番長は呆気に取られている。
「そういえばジュリアって前は隣町のお嬢様学校に通ってたんだよな?」
初めて会った時は名門私立学校の制服姿だったしな。
「えぇ、そうよ。堅苦しくてつまらない学校だったわ」
(お前は本当にお嬢様か?)っと番長は思った。
「でも、この学校は楽しそうね。何故だかあのブレザー服着るよりここのセーラー服を着た方が清々しい気分になるのよ。それに、この学校にはアーダルベルトみたいな番長
もいるしコンラッドもいるしね」
「コンラッドと知り合いなのか?」
「えぇ、幼馴染なの」
実際は子分扱いしている事を番長に言わないジュリアだった。
「そうか・・・」
アーダルベルト番長より隣のクラスにいるコンラッドの方がジュリアに関してよく知っているんだという事に、番長は何故だか少し寂しさを覚えた。
番長はその不思議な感覚の正体は分からず、あまり気にしない事にした。
「番長、ここでしたか」
「俺達と昼飯でも食いに行きましょう」
そこへ、アーダルベルト番長の手下2人組がやって来た様だ。
「アーダルベルトの連れの人も来た様ね、私はこれで失礼するわ。じゃあねアーダルベルト、お話しできて楽しかったわ」
「あぁ、じゃあなジュリア」
そう言ってジュリアはその場を去って行った。
手下のキーナンとマキシーンは、ジュリアの存在に気づいてバツの悪そうな顔して番長を見た。
「すいません番長、御2人の邪魔をしてしまったみたいで」
アーダルベルト番長は頬を赤らめながら怒鳴る。
「俺とジュリアはそんなんじゃ無ぇって言ってんだろ!///ほら、馬鹿な事言ってないで俺達もさっさと行くぞ」
アーダルベルト番長も早足でその場を去る。
「あっ、待ってくださいよアーダルベルト番長」
「早く来ねぇと置いてくぞキーナン、マキシーン」
こうしてアーダルベルト番長の一時の休息は終わりを迎える。
またいつもの番長に戻り、皆に慕われていくのだった。
END
う〜ん、何だか番外編っぽくなった?
遠い親戚の護衛ストーリーが進まない(汗)
ごめんなさい、次回に持ち越しです(><)
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