兄弟はライバル同士!!・・・その前に何か忘れてない?
さて、史上最強の強者が親分の役割を果たしてる為にへたれ人生まっしぐらのコンラッドは今日も今日とて愛しいユーリに心を奪われていた。
(ユーリに会いたい、ユーリに会いたい、ユーリに会いたい、ユーリに会いたい、ユーリに会いたい、ユーリに会いたetc・・・・・・)
心の声が駄々漏れしそうな程、毎度毎度同じ事を考えていた。
ここまで来ると言わばユーリ欠乏症と言っても良いくらいだ。
コンラッドの心の声にいつまでも付き合ってると話しが進まないので、この際無断でも何でも強制的に彼の考えは遮ろう。
そんな彼にも、恋のライバルが出現している事にまだ誰も知らない。
ぶっちゃけてしまうと、実はコンラッドの弟であるヴォルフラムでさえもユーリの愛らしい笑顔と真っ直ぐで純粋な性根に心を奪われてしまったのだった。
ある日の放課後の事、彼等(主にコンラッド)から鬱陶しいくらい想いを向けられるユーリが、あろう事かコンラッド達の通う血盟学園へと訪れていた。
そんなユーリをコンラッドは誰よりもいち早く発見した。
彼の全身から垂れ流すユーリ大好きオーラは既に感知機能でも取り入れてるのだろうか?
コンラッドに纏わる7不思議(←もっとあるかも・・・・)の1つであった・・・・。
「ユーリ、どうしたんですか?こんな所で。もしかして、俺に会いに来てくれたのですか?(にっこりフェロモン垂れ流し付き胡散臭い笑顔)」
「うぅん、コンラッドに会いに来たんじゃないんだ」
あっさりと即答で否定されコンラッドあえなく撃沈状態。
「実はジュリアさんに用事があって来たんだ」
「ジュリアに・・・ですか?」
「うん、コンラッドはジュリアさん何処にいるか知らない?」
「いえ、ジュリアはホームルームが終わってから姿が見えないので俺も今何処にいるか知らないんですよ」
「そっか、もう帰っちゃったかもな」
「多分それは無いから大丈夫ですよ」
日々ユーリを影ながら護衛しているジュリアが何もせず帰るなど、まず有り得ませんからね。
「そうなんだ。じゃあ、もう少し探してみるよ。ありがとな、コンラッド」
「待ってください、ユーリ」
立ち去ろうとするユーリを、コンラッドは尽かさず引き止める。
「んっ、どうしたんだ?」
「せっかくですから、俺もジュリアを探すの手伝いますよ」
「良いの?・・・あっ、でもコンラッド忙しくない?」
「大丈夫ですよ。丁度暇を持て余していたところですから」
部活はどうした?剣道部部長・・・・っと突っ込み入れる勇者は生憎この場にはいなかった・・・・・。
そんなこんなで、ユーリはコンラッドにあっさりと言い包められ行動を共にする事になったとさ。
場所は変わり、相も変わらず凛々しい姿のヴォルフラムが学校の廊下をツカツカと歩いていた。
そんな時、ヴォルフラムはコンラッドの後ろ姿を発見した。
(コンラッドの奴、堂々と部活をサボるとは良い気なものだな)
ヴォルフラムからしてみたらコンラッドの態度は余裕でいられる様にしか感じられなかった。
そういう態度はハッキリ言って面白くないと思ったヴォルフラムは、愚痴でも言ってやろうかとコンラッドに話し掛けた。
「おい、コンラッド。貴様部活はどうした?そろそろ始まる時間だろう。こんな場で油売ってる暇があるなら剣術でも僕に追い抜かれない様に鍛錬に励んだらどうだ?」
その場に一緒にいたユーリが、ヴォルフラムの言葉を聞いて申し訳なさそうにコンラッドに話し掛けた。
「えっ!?コンラッド今日は部活あったの!?」
ユーリがそう言ったら、ヴォルフラムは漸くユーリの存在に気づいた。
(ユ・・・・ユーリ?!何故ここに!?)
「大丈夫ですよ、ユーリ。今日は部活お休みですから」
平然とホラを吹くコンラッドであったが、その言葉にユーリは安心した。
「何だ、そっかぁー。コンラッド忙しくても気を使って俺に付き合ってくれてるんだと思っちゃったよ」
驚きで声にならなかったヴォルフラムが、ここでやっと声が出た。
「ユーリではないか!」
ユーリもヴォルフラムを見る。
「あれ?ヴォルフラムじゃん。何でここに?」
「それはこっちの台詞だ!水臭いぞ、ユーリ。ここに来るなら僕を訪ねて来れば良いものを」
「いやー、ヴォルフラムがここの学校の生徒って知らなかったからさ」
「そうか、だがこれで僕もこの学園の生徒だと知っただろう。今後は気兼ねなく僕に会いに来ると良い」
漢らしくふんぞり返るヴォルフラムに、今度はコンラッドが声を掛けた。
「何だ、2人共知り合いだったんですか?」
「うん、ヴォルフラムとは以前知り合ったばかりなんだ。ヴォルフラムを女の子だと間違えられてナンパされてたから助け様と思ったんだけど、逆に俺が助けられちゃってさ」
ユーリは恥ずかしそうに苦笑しながらヴォルフラムと知り合った経緯を話した。
「それより、コンラッドとヴォルフラムも知り合いなの?」
「ふんっ、知り合いも何も不本意ながら僕とこいつは兄弟だ」
「ちなみに、俺が兄でヴォルフラムが弟なんです。俺達の他に、もう1人上に兄がいるんですよ」
「えぇっ!?きょ・・・兄弟!!」
やはりと言うか何と言うか、見た目は似てない兄弟を目の当たりにしてユーリは素っ頓狂な声を上げた。
「これはまた・・・・随分似てない御兄弟で・・・・」
「よくそう言われるな」
「俺は父親似で、ヴォルフラムは母親似なんですよ」
「へぇー、そうなんだ」
しみじみ2人を見比べてたユーリに、ヴォルフラムが話し掛けた。
「そんな事よりユーリ、何故こいつを『コンラッド』と呼ぶ?こいつの本当の名は『コンラート』で、そう呼ぶのはこいつと親しい者だけだぞ」
「あぁ、それは俺がそう呼んでほしいってユーリにお願いしたんだよ。そうですよね?ユーリ」
「な、何だと!?それは本当か?ユーリ」
「うん、『コンラート』より『コンラッド』の方が呼びやすいし、俺もそう呼ぶのに馴れちゃったんだよな」
コンラートからそう呼んでほしいとはな。
ま・・・まさか、こいつもユーリに気があるんじゃないだろうな!?
いかん!!もし本当にコンラートがユーリに惚れてるのだとしたら、僕のユーリがお嫁に行けない身体にされるのも時間の問題だ!!
そうならない様に、僕がこいつの魔の手からユーリを守らなくては!!
「ユーリ、悪い事は言わない。こいつと親しくなるのだけは止めておけ!いつか性根尽きるまで貪り喰われるぞ!!」
ヴォルフラムの忠告も、ユーリは笑ってしまった。
「いきなり何言ってんだよ、ヴォルフラム。いつかは俺、コンラッドに頭からボリボリ食われるっての?そんな訳無いじゃん」
「そうだぞ、ヴォルフラム。貪り喰うだなんて勿体無い。どうせならゆっくり味わって頂きますよ」
「おいおい、俺は食い物じゃないぞ。コンラッドまで何言ってんだよ?」
「そうでした、ユーリ」
コンラッドの言葉にヴォルフラムの怒りは心頭した。
「貴様なんぞにユーリを渡してたまるか!!(怒)ユーリは僕が・・・・」
「ふーん、コンラッドって実はそんな事を考えていたって訳ね?まぁ、薄々感づいてはいたから今更驚かないけど」
ヴォルフラムがキャンキャン喚いてる最中に、彼の横にゆらりと別の人物が現れた。
「お前は?!」
「ジュ・・・ジュ・・・」
ヴォルフラムは驚いた様な顔でその人物に目を向け、コンラッドはと言うと顔面蒼白させながらその人物に目を向けた。
「あっ、ジュリアさんだ」
2人とは対照的に、呑気にその人物の名を呼んだのはユーリだった。
ヴォルフラムはともかくとして、ユーリの事で2人がライバル同士になるかならないかの前にジュリアという史上最強の難関がある事をコンラッドはうっかりと忘れていたらしい。
「どうしたの?ユーリちゃん。ここに来るなんて珍しいわね」
「お袋がジュリアさんに似合うって言うワンピースを作ったから、ジュリアさん届けに来たんだ」
ユーリは持っていた手提げ袋をジュリアに手渡した。
「まぁ、美子叔母様が私に?ありがとう、ユーリちゃんvv後程ユーリちゃんの家に改めてお礼に伺うから叔母様にもそう伝えておいてね」
「うん、分かったよ。用事も済んだ事だし俺はもう行くね、ジュリアさん」
「待って、せっかくだから一緒に帰らない?ユーリちゃんがここの学校に来てくれる機会なんて滅多に無いものね」
ジュリアのお誘いにユーリはにっこり微笑んで承諾した。
「はい、喜んで」
「ふふっ、良かったわvvじゃあ、昇降口の所で少し待っててもらっても良いかしら?私は帰る準備が出来たら行くわ」
「分かった。あまり急がないで大丈夫だからね、ジュリアさん。俺、昇降口の方に行ってるから」
ユーリはコンラッドとヴォルフラムにも別れを告げてこの場を去って行った。
「さて・・・・と」
ここでジュリアから発せられる空気は180度変わった事は言うまでもなかった。
「何をどう頂くと言ったかしら、コンラッド?(にっこり)」
「あわわ・・・・そ、それ・・・は・・・・(ガタガタ・・・(恐))」
今や恐怖のどん底に突き落とされたコンラッドは言葉が上手く発せられない状態だった。
自分の兄の現状を見るヴォルフラムはひしひしと嫌な予感が伝わってきた。
「それと、ヴォルフラム?」
そんなヴォルフラムの心境がお構いなしに、ジュリアはにっこり笑顔のままヴォルフラムにも話し掛けた。
「な・・・な・・・何だ?(滝汗)」
今のジュリアに恐怖を感じつつも、ヴォルフラムは勇敢にも声を振り絞った。
「あなたも私のユーリちゃんに気がある様だけど、そう簡単にユーリちゃんと友達以上のお付き合い出来るって思わないでね?どうしてもお付き合いしたくば・・・・」
「「お・・・・お付き合いしたくば?」」
コンラッドとヴォルフラムの声が重なり、互いに息をごくりと飲んだ。
2人に満面の笑顔を向けたジュリアが行った行動はただ1つ。
毎度同じパターンで2人に伝家の宝刀、拳闘術の数々をお見舞いしたのだった。
「私に勝つ事ね」
そう言い残して去って行くジュリアの背後には、息も絶え絶えな2人の姿があったのは言うまでも無かった。
(まぁ・・・ユーリちゃんにとって凄く大切な人が出来たとしたら、相手がコンラッドやヴォルフラムだろうと無理に反対しようとは思わないけどね。でも、私がそう思ってるのはまだ内緒なんだから)
そうジュリアは密かに思っていたのは彼女だけの秘密である。
この騒動の一端を見ていた生徒達は止めるどころかジュリアの雄姿に惚れ惚れしていた。
実は内緒で彼女のファンクラブが出来ており、男女問わずに人気絶賛中のジュリアであったとさ。
ジュリア達の騒動に珍しく巻き込まれなかったアーダルベルト番長は、自分のクラスにてマキシーンから報告を受けていた。
「アーダルベルト番長、コンラートの奴、またジュリアさんにぶちのめされたらしいですよ」
「おいおい・・・・コンラッドはまた何をやらかしたんだよ?(汗)」
「さあ?どうせくだらない事してジュリアさんを怒らせたんじゃないですか?それより、あいつ等を保健のケイ先生の所に連れてかれたでしょうから様子でも見に行きましょう」
「そうだな。世話の焼ける奴等だぜ、たくっ」
アーダルベルト番長とキーナンは今回の被害者達の元へと向かった。
一方、ジュリアはユーリと楽しく下校中であった。
どうやら今回はジュリアの1人勝ち・・・・かな?
END
主役の筈のアーダルベルト番長はちょい役で終わってしまいました(笑)
今回ジュリアの心境をちょこっと書けた事でコンラッドの想いが報われる希望が見えたかどうかは謎です。
だって、ウチのユーちゃんとんでもないおにぶちん設定ですから(キッパリ)
それと、今回名前だけ出てきた保健のケイ先生はとある御人からお名前を借りました。
分かった方はいるかな?
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