ジュリアの婚約が決まった訳
「村田、ミレーユさん遊びに来たよ」
「よくおいでくださいました眞王廟へようこそユーリ陛下」
「やぁ、よく来たね渋谷。ヨザックも渋谷の臨時護衛ごくろうだね」
「連れて来てくれてありがとうヨザック、ごめんなせっかくの休みに護衛してもらちゃって」
「いえいえ他でもない坊ちゃんの護衛、隊長や編み物閣下の命令が無くとも喜んでお引き受けしますよ」
そうなのだ、普段ならこういった外出にお供するのは護衛権名付け親であるコンラッドの役目なのだが今回は自分の仕事が忙しくて血盟城でお留守番で急遽幼馴染であるヨザックに変わりの護衛を任したのだった。
それはさて置き何故眞王廟へ遊びに来たのかというとユーリの親友である大賢者こと村田健がたまには眞王廟でお茶会なんてどうだい?と誘ったからである。
せっかくのお誘い、断る理由も無いので快く誘いに応じてお茶会に来たユーリだった。
「たまにはいつもと違うメンバーでお茶を飲むのもいいね」
「そうだね天気はいいしこういった日は外でお茶するのが醍醐味ってもんだよね。いやぁ〜僕って普段から天気のいい日って外で日向ぼっこしながらゆっくり粗茶をすすりたくなるんだよね」
「村田それって年寄りくさい発言だから、第一ここには粗茶無いから」
「猊下、粗茶ってなんですか?紅茶より美味しいお茶なんですか?」
「うん、少なくともヨザックが入れてくれた紅茶より美味しいよ。あっ、フォンウィンコット卿が入れてくれた紅茶はヨザックのとは違って格別に美味しいから」
「ありがとうございます猊下」
「酷いです猊下」
楽しく会話している中、ユーリがミレーユに話題を変えてきた。
「そういえばさミレーユさん、話しは変わるんだけどジュリアさんってあの顎割れマッチョのアーダルベルトと婚約してたんでしょ?親同士が決めたとはいえ何でアーダルベルトと婚約してたの?コンラッドとは恋人同士なんじゃないかって噂もあったくらい親密な仲だったって聞いた事あるし」
「そうですね、随分昔の事ですが気になりますか?」
「あーそれは俺も気になる、もし知ってんだったら聞かせてもらえねぇか?ミレーユちゃん。どうも親同士が決めたからって理由だけじゃ無いような気がするんだよな」
「渋谷もヨザックもそんな昔の事聞くなんて野暮というものだよ」
「だって、こうゆう事はコンラッドがいたら聞きにくいしそれに・・・・」
「それに2人の関係はやっぱり気になるんだもんですか?坊ちゃんったら嫉妬しちゃって可愛いvv」
「可愛い言うな///」
「そうだねー、ウェラー卿がいたんじゃ聞きにくいね」
「ふふっ、いいですよ私の知ってる限りですけどジュリアがアーダルベルトと婚約した理由を話しますね」
あれはもう数十年以上も前の事・・・・
ジュリアのお見合いの席には父親のオーディルと共にミレーユも同席したのだった。
グランツ家はウィンコット家の事を格下だのと卑下しているせいか弟のデル・キアスンは今回の婚約の件は猛反対していた。
ミレーユ自信はそんなウィンコット家を卑下するような奴だったら弟と共に反対してやろうと思っているが、ジュリアが婚約を承諾するなら賛成してあげようとも思っていたのだった。
「ミレーユ、あなたも今回の婚約の件は反対?」
「まだ何とも言えないわ。ただアーダルベルトという魔族がいけ好かない奴だったら反対してやろうと思ってるけどね」
「アーダルベルトなら大丈夫よ、あの人はとても繊細で優しい人だもの。とは言っても私もまだ婚約を受け入れたは訳ではないけどね」
「ジュリア、あんたアーダルベルトに会ったことあるの?いつ何処で?」
「ふふふ、内緒よ」
ジュリアはいたずらっ子のような笑みを浮かべた。
そんなジュリアの表情を見たミレーユは少しだけアーダルベルトに会うのが楽しみになってきた。
ジュリアは目が見えない分、相手の本質は非常に敏感に感じ取る事が出来る。
だからジュリアが大丈夫と言うならアーダルベルトという魔族はそんな嫌な奴じゃないかもと思ったミレーユだった。
「ジュリア」
ジュリアを呼ぶ声がして振り返ってみると、よく鍛えた筋肉質の肉体をした男性がいた。
「アーダルベルト、久しぶりね」
「あぁ、よく来てくれたなジュリアと・・・」
「私の妹のミレーユよ」
「初めましてフォングランツ卿アーダルベルト、ジュリアの妹のミレーユです。どうぞミレーユとお呼びください」
「おぅ、よろしくなミレーユ。ミレーユも堅苦しい敬語なんか使わなずにアーダルベルトと気軽に話してくれ」
そう言ったアーダルベルトにミレーユは気さくな人だなと思った。
彼はウィンコット家を卑下するような奴らとは違ってジュリアの言うとおり優しい人だとは思ったが、ミレーユから見たらジュリアの言う繊細そうには見えなかった。
「それじゃあお言葉に甘えて、よろしくねアーダルベルト」
「私とミレーユは血が繋がってないのよ、ミレーユが幼い頃に私の父親が引き取ったの」
「そうなのか?言われてみれば確かに容姿はあまり似てないな。しかし雰囲気なんかはそっくりだと思うぞ。血が繋がってないと言われるまでは本当の姉妹かと思ったぜ」
「ふふ、そうかしら?」
と3人で楽しく会話していた時に。
「ほらあの子、ウィンコット家の子よね」
「何故領主様はグランツ家より格下のウィンコット家の者とアーダルベルト様を婚約させようとしてるんだ?」
「ウィンコット家の者はその身に毒を宿すと聞いたことあるわ。それじゃ、あの人の目が盲目なのも毒の影響って事?まぁお気の毒」
などと耳障りなひそひそ話しがミレーユとジュリアの耳にも入ってきた。
「ただの戯言よ、気にするまでもないわ」
というジュリアだが、ミレーユは我慢がならなかった。
幼い頃に引き取ってもらってウィンコット家で育ってからあそこの人達は優しくて良い人達ばかりだと知っている。
何より両親を亡くしてからここまで育ててくれた恩人を馬鹿にされるのは許せないミレーユだった。
「ちょっとあんた達・・・・」
とミレーユが文句言ってやろうとした時に・・・・
「うるせぇ、てめぇら。よく知りもしない人の事をぐだぐだと陰口たたいてんじゃねぇ!!」
アーダルベルトの怒鳴り声が部屋中に響いた。
そんなアーダルベルトとに陰口をたたいてた人達はすいませんでしたと頭を下げその場を退場していった。
「そんな事があったんだ、アーダルベルトって良い奴じゃん」
「グランツの若旦那かっこいい」
「本当惚れ惚れする男らしい発言だね。どこかの誰かさんとは違ってへたれでも無さそうだし」
大賢者がへたれと言った人物は誰を指しているのかは、ここはあえて言わないでおこう。
今頃血盟城ではくしゃみをした人物が約1名いるかもしれないが。
「そこでジュリアさんはアーダルベルトと婚約しようって決めたんだ」
「いいえ(きっぱり)そこは私がアーダルベルトを認めた時です」
「「「はっ?」」」
アーダルベルトの男らしい一面で婚約を決意したんだと思った3人はミレーユの発言に思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
「私もジュリアがグランツ家に嫁いで幸せになれないようならお見合いをぶち壊す気でいたんですよ。でもアーダルベルトならきっとジュリアを幸せにしてくれるとその時思ったんです」
「いや、そこは分かったんだけど肝心のフォンウィンコット卿のお姉さんは何処で婚約を決意したんだい?」
「ここから先は若い者同士でということになり私も父と一緒にお見合いから退席したので実際には見ていないんですけど、その後のジュリアとアーダルベルトのやり取りで婚約を決意したそうですよ?ジュリアから聞いた話しによると・・・・」
「ジュリア、俺はお前が誰よりも好きだ、愛してる。親同士の決めた婚約だけどそんなの関係ねぇ、俺はお前と一緒になりたい。俺と結婚してくれ!」
「アーダルベルト、私もあなたは素敵な人だと思うしずっと一緒にいたいと思うわ」
「それじゃあ・・・・」
どこぉ!!
(注)殴った音です
「ぐふぉ(吐血)」
「1分以内に立ち上がれたら結婚してあげるわvv(にーっこり)」
「・・・・とジュリアは言ってましたけど」
「そりゃまた凄い理由なんすね(汗)」
「1分以内に立ち上がれたんだ(汗)」
「でも女性が殴ったくらいじゃあのアーダルベルトなら1分どころか10秒経たないうちに立ち上がれちゃうんじゃ・・・」
「何言ってんですか陛下、ジュリアは拳闘の達人と言っていい程の腕前なんですよ?あのアニシナだってジュリアから武術を習ってたくらいなんですから」
「ジュリアさんってそんな凄い人だったの?」
「はい、しかもジュリアは目が見えない分、一撃で倒せるように相手の急所を狙ってよく1発で仕留めますからアーダルベルトにだって血迷いも遠慮も無く急所に入れたと本人は言ってましたよ」
「そういや隊長もジュリアが腕を『ぼきぼき』と鳴らしてた時は表情が蒼白になりながらよく逃げてましたね」
「ははは、ウェラー卿もフォンウィンコット卿のお姉さんに血祭りにされた事があったりしてね」
「まさかコンラッドに限ってそれは無いんじゃない?」
「いえ、ありましたよ」
「「「あったんだ(汗)」」」
あのコンラッドをぼこぼこの血祭りに上げられたのはジュリアしかいないだろう。
「な・・・何か想像していたよりかなりかけ離れてるんですけど。ジュリアさんとコンラッドの関係ってもっと恋人らしいと思ってたのに」
「だから根も葉も無いただの噂なんですよ。傍から見れば恋人同士に見えようと実際のコンラートはジュリアを怒らせない様によく下手に出てましたから」
「それで2人は喧嘩も無い仲の良い親密な関係に見えた訳なんすね」
「いやぁ〜それにしてもフォンウィンコット卿のお姉さんは面白い理由で婚約を決意したね」
「はい、ジュリアの好みは強くて、男らしくて、頑丈な人でしたから。それはもう強さこそ全てというくらいに自分より弱い人は見向きもしませんでしたよ」
「よかったね渋谷、ウェラー卿とフォンウィンコット卿のお姉さんの関係の真実が知れて」
「ははそうだな(苦笑)」
本当に知っても良かったんだろうか?と笑うしかなかったユーリだった。
真実を知った今、思い出を美しく語っていたコンラッドに非常に申し訳なさを感じるユーリだったとさ。
END
コン×ジュリ派な方々には非常に申し訳ないです(><)
そんなヨシはアダ×ジュリ派です(←主張すな)
もしもの世界のジュリアのキャラを考えるとこんな婚約の決まり方もありかな?と思った訳です・・・はい;。
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