マ王不在の眞魔国、女性の手により守られる
「じゃあ俺達は行くな、コンラッド」
「ユーリ、俺達はいつでもあなたのお帰りをお待ちしています」
今にもお別れの抱擁をしそうなユーリとコンラッド。
「フォン・ウィンコット卿、僕達はテストが終わったらまた帰って来るから、それまでの事は頼んだよ」
「分かりました。猊下もどうぞお気をつけて」
2人の事は完全にスルーしてる村田とミレーユだった。
ユーリと村田は学校のテスト前の為、一時地球へと帰郷するのであった。
そこでお見送りしてるコンラッドとミレーユ、特にコンラッドの方はユーリと一時お別れするのに実に名残惜しそうである。
他の者の見送りはどうしたかと言うと、コンラッドの腹黒い計画によって随時もにたあ募集中の赤い魔女様の所に強制搬送されたとかされないとか・・・・。
しばしの別れの挨拶が済んだ後、ユーリと村田は眞王廟に設置される泉の向こうへと消えていった。
「陛下も猊下も無事に地球へとお送り出来たわね、コンラー・・・・んっ?」
ミレーユがコンラッドの方へと向くと、ユーリが去ったと同時にズーンと重たい空気を纏ったコンラッドがいた。
「うぅ・・・ユーリ・・・(泣)」
「陛下達はたった今お帰りになったばかりでしょう!速攻で寂しがるんじゃない!!」
「うぅ・・・俺とユーリを引き離す地球など滅んでしまえ・・・」
「そんな物騒な事・・・・」
ミレーユは頭に怒りマークを貼り、プルプル震えながら握り拳を作った。
「平然と言ってんじゃなーい!!(怒)」
ドコォッ!!
コンラッドに全身全霊全力のアッパーで殴り飛ばしたミレーユだった。
哀れコンラッドは空の彼方に消え、夜空に輝くお星様になったトサ。
『ちょっ・・・勝手に殺さないでくれないか?!』 byコンラート・ウェラー
「ったく、何考えてんのよあの男は!?」
ミレーユは怒りが未だに治まらない様で、未だに全身を震わせながらハァハァ息をしていた。
「・・・・・アニシナから熊手でも借りて、もっと思いっきりぶん殴ってやれば良かったかしら?」
そんな事したら本気でコンラッド殺しかねないかもしれないが、過去にジュリアからの脅威の特訓により運が良ければ無事な可能性もある・・・・かな?
「それにしても、コンラートを中心とした男共があんなんで陛下達がご不在の今、眞魔国や血盟城を守りきれるのかしら?」
ミレーユは呆れ果てていた事は言うまでもなかった。
さて、コンラッドがへたれてるのはいつもの事なので置いておこう。
一方、血盟城に侵入しようとする不届き者が約2名いた。
警備の者がいるだろう?と思われるだろうが、城主である張本人がよく脱走したり拉致られてる辺りから今更突っ込みの入れようが無い。
もっと城の警備を強化した方が良いのではと密かにお勧めしておこう。
話しが大きく逸れそうなので、侵入者の方へと話しを戻そう。
侵入者達は一足差し足忍び足の如く、そろりそろりと血盟城内を歩いていた。
「おい、本当に大丈夫なのか?魔族達の親玉が住まうと言われる血盟城なんかに侵入して」
「何だよ、今更怖気づいたのか?」
「そんなんじゃ無ぇよ。ただ、魔族の奴等は元来気性の荒い種族だと言われてるんだぞ?俺達だけで攻め込んで平気かどうか心配になっただけだ」
「心配するな。まずは攻めやすい所から落としていき、徐々に魔族共の戦力を削ってけば良いんだよ。そうすれば俺達でも勝機はあるぞ」
「おぉ!もし俺達がこのまま魔族共に勝ち、尚且つ従えさせる事も出来れば我等に軍杯が上がると同時に我が国の知名度も大幅アップ!」
「そうだとも!しかも、それを見事にやり遂げ国に戻れば俺達は我が国の英雄だ!!」
そう簡単に上手く行くかどうかも分からないが、2人組みは暫し都合の良い妄想に浸っていた。
「良しっ、俺はやるぞー!!まずは何処から攻め込む?」
「そうだな、手始めに医療部隊辺りはどうだ?医療部隊はあくまで後衛で援護する役割。武術の心得などせいぜい護身術程度の腕前だろう」
「確かにそうだな。医療部隊の奴等は人質にして、他の部隊の奴等も制圧してこうぜ」
奴等は知らなかった。
医療部隊にはラスボスクラスに匹敵する程の鬼軍曹魂を発揮する女性がいる事を・・・・・。
何だかんだで医療部隊が待機する場所に侵入する事が成功した2人組み。
そこには・・・・・・
「この程度の訓練でへこたれるとは何事だ!?貴様等の性根を叩き直してやるから、歯ぁ喰いしばらんかぁー!!」
ドコォッ!!バキィッ!!ボコォッ!!
鬼軍曹化したギーゼラに、文字通りボコボコにされる一兵卒という恐怖の地獄絵図を遠目から目の当たりにした2人組は震えていた。
「おい・・・あれが本当に医療部隊なのか?スパルタ訓練してる別の部隊なんじゃないのか?」
「いや・・・確かに情報屋から仕入れた情報では、あれが医療部隊の連中と聞いたんだが・・・・」
2人は悟った、医療部隊と言えど何時いかなる時も前線にて戦える術を魔族共は身につけているのだと。
流石気性の荒い種族を言われるだけの事はある、恐るべし魔族・・・・・。
「作戦変更だ。血盟城の近くに魔族共が今でも神同等と称える前魔王の魂を奉る廟があると聞いた。まずはそこから攻め込んで落とすぞ」
「なるほど、その廟を制圧すれば魔族共も俺達に従わざる得ない状況になるって訳だな」
「そうだ、さぁ行くぞ!」
果たして、そう事は上手く行くのだろうか?
「回り込み奴等を追い詰めろ!神聖なる眞王廟に足を踏み入れる不審な不届き者を絶対に逃がすな!!」
「「「「「「はい!警備隊長殿!!」」」」」」
眞王廟に足を踏み入れた瞬間、何処からともなくミレーユを中心とした警備部隊員から放たれた矢で足止めされ、剣や槍を持つ残りの隊員達に回り込まれあっさりと捕獲されてしまった2人組みであった。
「くっ・・・・」
「俺達もここまでか・・・・」
そんな2人組みにミレーユが近付いて来た。
「あんた達は見た所、普通の人間の様ね。2人だけで眞魔国に攻め込んで来るだなんて、随分と甘く見られたもんだわ」
「「・・・・・・・・・・・」」
2人組みは何も応えなかった。
そんな中、警備隊の1人がミレーユに話し掛けてきた。
「警備隊長殿、この輩達はどの様にいたしましょう?」
「そうね、ここを攻め込もうだなんて馬鹿な事を2度と考えない様にするには『アレ』に預けるのが1番でしょう」
「アレ・・・・と申しますと?」
「まぁ、こいつ等の事は私に任せて。皆は各自の持ち場に戻る様に」
「分かりました」
こうして不届き者約2名はミレーユ監視下の元、何処かに連行されたのだった・・・・・。
「失礼するわ、アニシナ」
「おや、ミレーユではありませんか。あなたが私の実験室に訪れるのは珍しいですね。何かご用でも?」
「えぇ、ちょっとね。新しいもにたあ候補を届けに来たわ」
ミレーユに連行されて来た2人組みは手、足、口をがっちりと拘束されている状態だった。
今の2人にとっては嫌な予感しか感じられず、『むー、むー』と無駄足掻きでジタバタ暴れるしか出来なかった。
「これはこれは、また随分と活きの良いもにたあを連れて来た様で。ご協力感謝します、ミレーユ」
「いえいえ、お気になさらずに。また役に立ちそうな魔導具を発明してくれる事に期待しているわ」
「言われなくてもそのつもりです。この不詳アニシナ、情けない男共に代わり必ずや眞魔国の繁栄に導いてみせましょう!」
「流石アニシナね。頼りにしてるわよ」
見た目だけなら美しい淑女達だが、実際は今現在もにたあになる張本人達の目の前で物騒な会話を繰り広げていた。
こうして、眞魔国の平和は今日も守られていくのであった。
END
魔族の女性は強者揃い!って事で男の面目丸潰れにさせていただきました(笑)
コンラッドはユーちゃんがいない眞魔国では、絶対に怠け者と化すとヨシは信じて疑ってません(キッパリ)
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