同病相哀れむ
「ぐぎゃー!!」
ある日の正午、何処からともなく聞こえて来る断末魔の様な悲鳴。
その悲鳴の正体はコンラッドの奇声である。
何を隠そう、只今のコンラッドは以前経験させられたジュリアのお願いに付き合わされていた。
本日お願いされた内容も、新技研究も兼ねた訓練であったのだった・・・・。
あぁ・・・空が青い・・・。
俺は何故校舎裏なんかで寝転んでるいるんだっけ?
と言うか、マジで体が動かないんですが!
そういえばジュリアの新技訓練に付き合わされている内に、俺は失神してしまったんだっけ?
今日の新技は関節技が多かったからなぁ・・・。
毎度の事だが、俺はまた途中で意識を失くしたんだな。
それでもって、俺の状態など全く気づかないジュリアは一通り満足した後にアーダルベルトの元か、はたまた愛しいユーリの元へと行ったか・・・。
どちらにしても、今日は体がギシギシとした痛みがあって満足に動けそうも無い。
俺は体が動ける様になるまでぼんやりとする事にした。
そんな時に思い浮かぶのは愛しくて可愛らしいユーリの笑顔。
あの可愛らしい笑顔で癒されたい・・・。
俺はユーリに会いたいと、ひたすら思っていた。
すっかりとジュリアの子分が定着してしまった幼馴染みのコンラッドであった。
そんな時、今のコンラッドにとっては救いの神の様な人物が彼の元に現れたのだった。
「誰か倒れてると思ったら隣のクラスのコンラートか。こんな場で何してるんだ?」
「あぁ、アーダルベルトの手下のマキシーンか。生憎だが今は少し動けない状態なんだ」
マキシーンがやって来ても、コンラッドは寝たままの状態であった。
いや、まだ動ける状態まで回復していないと言った方が正しいだろう。
「何だよ、喧嘩でもしたのか?」
「喧嘩って訳では無いさ。史上最強の強者にやられたって所かな」
「へぇ・・・剣道部強豪と言われる部長とあろう者が、こんなになるまでの強者がこの学校にいるとはな。アーダルベルト番長って訳じゃ無いよな?番長はこんな弱い者苛めみたいな事は極端に嫌うからな。あっ、気を悪くするなよ?何もコンラートが弱いって言ってるじゃ無いからな」
コンラッドは明後日の方向を向きながら思った。
(そのアーダルベルトの元に、史上最強の強者が行ってるかもしれないけどな・・・)
「俺をやった奴は色んな意味でアーダルベルト以上に強者だよ・・・」
「アーダルベルト番長以上に強者か!?もしかして、番長もたじたじに押され気味なジュリアさんだったりしてな」
笑いながら言ったマキシーンだが、コンラッドはあからさまにギクリとした。
「おいおい、まさか当たりかよ?」
「認めたく無いだろうが、そのまさかだよ・・・(泣)」
「そりゃあ後愁傷様だな。流石、ジュリアさんと言っとくべきか・・・(汗)で、何をされたんだ?」
「ジュリアの新技訓練・・・今日は関節技が多かったから、情けない事に思うように体が動かないんだ」
「分かる!分かるぞ、コンラート!俺も手に負えない奴が身近に2人もいて、つい先日プロレス中継見てたら面白がって俺に関節技ばかりしかけてきたぞ!それも2人掛りでだぞ!?あの時は俺も暫らく体が思うように動かなかったからな」
「何!?マキシーンも俺と同じくらい不幸な被害を遭わせられてる奴がいるのか?」
「まぁな・・・それも俺の妹達だから余計に達悪いぜ。夜なんか早く寝ろと叱れば俺の枕に針を仕込まれ、買い物行けとお願いしたらそっぽ向かれ、あげくの果てには2人掛りでプロレスを中心とした格闘ごっこを要求されるわ・・・。しかも毎回、俺が技を喰らい役・・・(泣)」
「お前も色々と苦労してるんだな・・・」
自分と似た様な境遇にいるマキシーンに、コンラッドは親近感を感じたのだった。
「女って恐いな・・・」
「あぁ、絶対に逆らうもんじゃ無ぇ・・・」
コンラッドとマキシーンは同時に溜息を吐いた。
これから先もずっと逆らえないであろう女達に、2人にとってはお先真っ暗であった。
「どれ、保健室まで行ければ湿布くらいは貼ってやれるぞ。動けそうか?」
「あぁ、暫らく休んでいる内に何とか動けるくらいにはなってきたって所かな」
コンラッドがよろりと立ち上がると、マキシーンが肩を貸してやった。
「悪いな、マキシーン」
「何、気にするな。保健室着いたら、何処にどんな風に湿布を張ったらより効果があるかついでに教えてやるよ」
「そうしてくれるとありがたい。手馴れてるんだな」
「妹達のお陰でな。嫌でも手慣れとかないと俺の身が持たん!」
それでもマキシーンが妹の面倒を見るのを投げ出さないのは素直に関心出来るとコンラッドは思った。
出会った当初はあまり面識も無く、こんな一面があるとは正直思わなかった。
マキシーンという人物は最初からこういう人物だとしても、何かと誤解されがちでそういう風には見えなかった。
「やはり人間は外見では無くて中身だよな。ユーリは外見も中身も良いけど・・・」
改めて実感したコンラッドであった。
「今、さりげなく失礼な事言っただろう?」
マキシーンの言葉をコンラッドはあっさりとスルーした。
「俺も、もっと中身を磨いてユーリと釣り合う男にならないとな」
「何だかよく分からんが、まぁ頑張れよ」
今ここに、摩訶不思議な友情が芽生えようとしていた。
その姿はまさに、同病相哀れむ者同士。
類は友を呼ぶとはよく言ったものである。
END
原作ではほとんど関わりの無い、コンラッドとマキシーンの友情(←?)物語でした。
苦労を味わう者同士、妙な所で共通点があるなと思ってしまった訳です(笑)
哀れな男達の苦労は続く!
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