出会った2人、それは恋の予感?
本日は見事な晴天なり。
暖かい日差しを全身に受けると平和ボケしそうな程、のだか日和。
今日もアーダルベルト番長、手下のキーナンとマキシーンを引き連れ町を散策中。
その姿はまるで、とても頼りになる警察官がパトロールをする姿に似ている。
番長本人は正義の味方ぶる気はさらさら無いが、困ってる人を見掛ければそれを放って置けない性なのだ。
『パトロールお疲れ様です!番長』などと声を掛けると、『馬鹿野郎!そんなじゃねぇ!!///』と頬を赤らめながら否定されそうだ。
厄介事が彼を呼ぶのか、それともたんなる偶然に居合わせるのかは、本人にも分からない。
「アーダルベルト番長、今日の活躍も見事でしたね」
「ゴロツキ共をなぎ倒す所なんかマジでカッコよかったです!本当に番長は凄い御方です」
今日は数人掛かりでリンチを受けてる者を救ったアーダルベルト番長。
相変わらず、何かあれば人助けをしてる様だ。
そんなアーダルベルト番長は手下から慕われ、常に尊敬の眼差しを向けられる。
「何言ってんだよキーナン、マキシーン。俺はああゆうやり方の奴等が気に喰わなかっただけだ。たくっ、男なら正々堂々さしで勝負しろ!ってんだ」
別にリンチを受けてる奴を助けたかった訳じゃない、事のついでだ。
しかし、大抵の助けられた者はアーダルベルト番長に感謝する。
こうして密かにファンが増えていってる事を、番長本人は知らない。
事実、番長の様な男になりたいと願う者が急増して手下になりたいと言ってくる者が多いのだった。
「さて、俺はそろそろ帰るとするか。お前達もまだ町を振らつくなり、ウチに帰るなり好きにしろ」
「はい、今日もお疲れ様でしたアーダルベルト番長」
「また明日お会いしましょう」
「おぅ、また明日な。じゃあなキーナン、マキシーン」
番長は手下達と別れ、自宅の帰路へと歩みを進めた。
「んだぁ〜、このアマ!?女はすっこんでろ!!」
番長の帰宅途中、町の路地裏から男の怒声が聞こえてきた。
(何だ?誰かがチンピラにでも絡まれてるのか!?)
不振に思ったアーダルベルト番長は、声の聞こえた方へと向けて走って行った。
現場に着いて状況を見てみると、髪が長くて、体格は華奢で、何処かのお嬢様と思わせる風貌な女性が数人の男達に囲まれていた。
「あなた達がこの人からお金をせびる事を止めたら、すっこんであげるわよ」
よく見ると、女性の背後には体を震わせながら怯えてる少年がいた。
カツアゲでもされていたのかもしれない、その女性が偶然に居合わせて少年を助けに入った所の様だ。
「ほぉ?少し痛い目見ねぇと分かんない様だな」
囲っていた男の1人が、腕を『ぼきぼき』ならして女性へと近付いて行った。
「へぇ、無抵抗の者に手を上げるって訳?つくづく救いようの無い下賤な人達ね」
女性はふっ・・・嘲笑うかの様に、男を見据える。
その態度が癪に障ったのか、男が怒声を上げながら殴り掛かってきた。
「舐めんな、このアマ!」
それを見たアーダルベルト番長は、女性を助けようとその場に踏み込もうとした。
しかし、女性に殴り掛かった男は、何故か次の瞬間には宙に浮いて地面に落ちた。
その光景に、その場にいた番長を含め、誰もが目を見張った。
一瞬の事でよく分からなかったが、男の拳を難なくかわした女性は手に持っていた鞄を落とし、瞬時に間合いを詰め強力な鉄拳を男にお見舞いしたのだった。
「舐めてるのはどっちよ?そっちこそ女だからって甘く見てんじゃないわよ!」
女性はその場にいる男達を睨みつけた。
女性と少年を囲っていた男達はたじろいて『ひっ・・・』と逃げ出してしまった。
「ふんっ、大した事の無い奴等ね」
女性は手をぱんぱん払いながら、落とした鞄を拾った。
助けられた少年とアーダルベルト番長は呆然としていた。
「おいおい、すげぇ女だな・・・」
俺の出る幕は無さそうだな。
それにしてもあの女、かなり強いな。
アーダルベルト番長は、あの女性に興味を惹かれた。
何故だか女性の事をもっと知りたくなってきた様な気がしたのだった。
救われた少年は、さっきの恐怖がまだ抜ききれていないのか、未だに目に涙を溜めて体を震わせていた。
そんな少年に女性は容赦無く渇を入れた。
「貴様も男ならいつまでもめそめそするな!!あんな下賤な輩にやられて悔しくは無いのか!?」
少年は訳も分からずひたすら『ごめんなさい』と女性に謝っていた。
それから・・・・・
「さっきからそこで見ている貴様も、こっちを助けるか助けないかはっきりせんかボケ!!」
そう言いながら拾った鞄を、今度は番長に目掛けて思い切り投げつけてきた。
まさか見ていた事に女性が気づいてたとは思わなかった番長は、反応が遅れて顔面に鞄が『ドカッ!!』っとクリーンヒット。
衝撃で思わず倒れてしまいました。
「痛てて・・・」
番長は顔を押さえながら、起き上がった。
俺とした事が、不覚を取られてしまったぜ。
女性は言うだけ言って、投げた鞄を拾ってその場から立ち去ろうとした。
「おい、少しだけ待ってくれ。お前の名は何ていうんだ?」
女性は番長に背を向けながら言った。
「人に名を尋ねる時は、自分から名乗るのが礼儀なんじゃないかしら?」
相変わらず喰えねぇ女だな、こんな女を見たのは生まれて初めてだぜ。
「それは悪かったな。俺の名はアーダルベルトだ」
「・・・・ジュリア」
女性はポツリと囁いた。
「何だ?」
「私の名前はジュリアよ。じゃあね」
自分の名を名乗った女性は、今度こそこの場を立ち去っていった。
「ジュリア・・・か、また近いうちに会えそうな気がするぜ」
そんな保証も確証も無いが、また必ずジュリアに出会える予感でいっぱいのアーダルベルト番長だった。
END
以上、アーダルベルト番長とジュリアの出会い編でした。
今回ほとんど台詞も無く出演した絡まれた少年は、前回の「ある少年」とは全くの別人です。
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