イベント満載の秋! 文化祭当日で大騒動 後編
「きっと、忙しくて皆が出払ってた時に、売上金を誰かに盗まれたんだと思います」
突然に聞かされた出来事。
アーダルベルト番長はわなわなと全身を震わせながらギリッと拳を握り締め、背を向けこの場から退出しようとした。
「ば・・・番長!?」
「お前達、もうしばらくここを頼む。俺は売上金を盗んだ犯人を探してくる」
「探すって、ちょい待った番長の旦那。売上金を誰が盗んだかなんて目星は全く無いんすよ。それをどう探すって言うんすか?」
「目星は無くても、犯人はまだここいら辺にいる可能性はあるだろう。せっかく皆で苦労して入った売上金を盗まれたなんて馬鹿な話しがあってたまるかってんだ!絶対に犯人をとっ捕まえてやらぁ!!」
そう言ってアーダルベルト番長はメイド姿のまま飛び出して行ってしまった。
ヨザックはアーダルベルト番長を見送りながら、溜息を吐きながら言った。
「もう、旦那ったらしょうもないお人なんだから。皆、売上金の事は番長の旦那に任せて、ここはグリ江達で切り盛りするのよ」
「「「「「おー!」」」」」
この場に残ったアーダルベルト番長のクラスメート達が結託して掛け声を上げていた。
「とは言っても、いつまでも旦那がいないとなると少しキツイのよね。旦那がいない分はどうしようかしら?」
「あの・・・ヨザック」
ヨザック達の元にいつのまにかユーリと村田がいて、ユーリがおずおずとした感じで背後からヨザックに話しかけた。
「あら、坊ちゃん方。こんな場まで入ってきちゃ駄目じゃない!さぁ、坊ちゃん方は戻って」
「ごめん!立ち聞きするつもりは無かったんだけど、ここの前を偶然通りかかった時にヨザック達の話し声が聞こえちゃってさ。それで、何か大変そうだから俺達でも何か手伝えないかと思って・・・」
「手伝いって、そんな事を坊ちゃん達に頼めないっすよ!」
「まぁまぁ、ここは渋谷のお人よしに免じて何か協力させてくれないかな?」
「そうは言われてもねぇ・・・・」
ヨザックは中々食い下がらない2人に困った様に頭を掻いた。
「俺に出来る事なら何でもするよ!せっかくジュリアさんが楽しみにしていた文化祭をめちゃくちゃにしたく無いんだ!」
「何でも・・・・男に二言は無いっすね?坊ちゃん」
「おぅ、男に二言は無い!」
「それじゃあ坊ちゃんにも手伝ってもらっちゃいましょうかねー?」
「おい、ヨザック。いいのか?そんな事を勝手に決めて」
「今は固い事言いっこ無しっすよ、キーナン。ジュリア嬢の為という健気な坊ちゃんのお願いを無理に突っ撥ねる方が心苦しいじゃないっすか。番長の旦那だってきっと分かってくれるわよん」
「ありがとう、ヨザック。俺、頑張ってヨザック達を手伝うから!」
「うふふっ、ありがとう坊ちゃんvvそちらの眼鏡の坊ちゃん、こちらの坊ちゃんをちょっとお借りするわね」
「渋谷の言い出した事だからね、好きにするといいよ。渋谷、僕はここで待たせてもらうから」
「じゃあ、ジュリア嬢のとこの坊ちゃんはグリ江と一緒にこっちに来て。ちょっとお着替えしてもらいたいから」
「へっ、着替え?」
「そう、お・着・替・えvv」
ユーリはヨザックに連れられて、扉の向こうへと姿を消したのだった。
ったく、人様の売り上げ金を盗むだなんて犯人の奴も馬鹿げた事をやってくれる。
そんな風上にも置けない奴は1発ガツンっとお見舞いしてやらなきゃあ気が治まら無ぇ!。
アーダルベルト番長、廊下を颯爽と駆け抜ける。(←だから廊下を走ってはいけません)
その途中、ドンッ!と誰かの肩にぶつかった。
「っと、すまねぇ!急いでたもんで・・・・」
「いえ、大丈夫よ。こっちこそぶつかったりしてごめんなさい・・・・って、アーダルベルト!」
「ジュリア!お前、執事喫茶の方に戻ったんじゃあ?」
「一端は戻ったんだけど、ちょっと厄介な事が起きたのよ」
ジュリアも何時に無く深刻な表情をしていた。
その表情とジュリアにしては珍しく慌てた様子を見たアーダルベルト番長は、何が起きたかを察する事が出来た。
「その様子だと、どうやらジュリアの所もやられたらしいな」
「やられたって・・・・まさか、アーダルベルトのクラスも!?」
「あぁ、売上金をごっそり盗まれたぜ」
「私達だけじゃなくて、他のクラスも被害に遭ってるかもしれないのね。犯人は何て卑劣な奴なのかしら!」
「ジュリア、呑気に立ち話しをしている暇は無ぇ!ここは一時休戦して手を組まねぇか?」
「そうね、アーダルベルトが手を貸してくれるなら心強いわ。2手に別れて犯人を探しましょう!」
「分かった。ジュリア、無茶するんじゃ無ぇぞ?」
「アーダルベルトもね」
そう言ってアーダルベルトとジュリアは2手に別れた。
他のクラスの生徒達にも注意を呼び掛けながら行動を開始した。
「へへっ、ここの文化祭は繁盛してるお陰で売上金がたんまりだな」
「まったくだぜ。しかも、出店してる場所が急がしそうな所程、儲かっていそうなうえ忍び込むのは簡単だしな」
「しかし、そろそろ金が無くなってる事に気づかれてるかもな。もう1店くらい売上金を盗んだらずらかるとしようぜ」
「そうだな、そうするか。さて、お次は何処が良さそうかな?」
文化祭のお客様達の中に紛れ込んでいる、売上金を盗んだ犯人その1と犯人その2。
未だに悪事を企みつつ文化祭会場をうろついていた。
「おっ!あの店なんか良さそうじゃねぇか。あそこも忍び込むのが簡単そうだぜ」
「早速、売上金を頂きに行こうぜ」
手頃な出店している場所を見つけた犯人その1と犯人その2。
周りを見計らいながら、裏口からこそこそ入ろうとした。
たまたま偶然にその場を通りかかったアーダルベルト番長。
2人組の男を不振に感じていた。
何だ?あんな奴等この学校には見かけた事無ぇぞ。
部外者がどうして裏口から入ってるんだ?
アーダルベルト番長はまさかと思いながら、2人組の男達の後を気配を消しながらつけて行った。
犯人その1と犯人その2は裏口から侵入した後、売上金を保管してありそうな場所をくまなく探した。
がさごそと物色していたら、売上金らしきお金を発見したのだった。
「この金、間違いなく売上金だぜ?」
「きっとそうだぜ。その金を頂いてさっさとこことおさらばするぞ」
アーダルベルト番長は、男達がお金を懐に仕舞う決定的な瞬間を見た。
間違いねぇ、俺達の売上金を盗んだ犯人はきっとこいつ等だ!
「お前等、何処からおさらばするって?」
アーダルベルト番長、怒りのオーラを露にしながら犯人その1と犯人その2の前に立ち塞がる。
「お前は!・・・・・・変態か?」
「マッチョな男のくせにメイドの格好してるよ。うわ、キッツー」
「俺だって好きでこんな格好してんじゃ無ぇよ!!(怒)」
アーダルベルト番長は怒鳴った後に一息置いて話しを戻した。
「そんな事より、お前等が懐に入れたその金、ここを出店してる奴等が稼いだ売上金なんじゃないのか?それと、メイド喫茶と執事喫茶の売上金を盗んだのもお前等の仕業だろう?」
「だからどうだって言うんだ?知られたからにはお前をお寝んねさせて、この場をずらかるだけだ。変態は大人しくすっこんでろ!」
アーダルベルト番長に立ち向かって来た犯人その1。
「だから、俺は変態じゃ無ぇって言ってんだろうがー!!」
ズシーン!!
アーダルベルト番長は犯人その1が殴りかかってくる腕を易々と捕らえ、そのまま1本背負いで投げ飛ばして返り討ちにした。
「ぐえっ・・・・!」
「お前等みたいな風上にも置けない奴等に、俺がやられるか!ってんだ」
「ひぇ・・・・」
「さて、残るはお前だけだな?」
犯人その2は立ち塞がるアーダルベルト番長から尻尾を巻いて逃げだした。
「あっ、待て!」
「待てと言われて待つ奴が何処にいるっていうんだよ?この金は絶対に渡さねぇ!」
逃げる犯人その2をアーダルベルト番長は追いかけようとした。
その時、別の人物が犯人その2の前にすっと立ち塞がった。
「そこをどけぇー!」
犯人その2は立ち塞がった人物を突き飛ばそうとした。
しかし、次の瞬間・・・・・
「せいっ!」
ドコォッ!!
犯人その2は回し蹴りをくらってしまい、逆に蹴り飛ばされてしまった。
「ぐぉっ・・・・!」
アーダルベルト番長は立ち塞がった人物の姿に目を向けた。
「お前は・・・・ジュリア!」
「ふぅ、どうやら間に合った様ね」
「お前、別の場所で犯人探しをしていた筈じゃあ・・・・」
「えぇ、そうよ。でも、他の人から不振人物らしき人をアーダルベルトが向かった方で見かけたって聞いたから、急いでこっちに戻って来たのよ」
「そうか、とにかくジュリアが来てくれたお陰で助かったぜ。こいつ等が俺達の売上金を盗んだ犯人だ!」
「そうみたいね。さぁ、こいつ等から盗まれた売上金を取り返さなくちゃ」
アーダルベルト番長とジュリアは伸びた犯人その1と犯人その2をたたき起こして盗まれた売上金を取り戻す事が出来たのだが・・・・・。
「なっ、何ですってぇ〜!?お金をごちゃ混ぜにしたから、私達の売上金がいくらだったか分からない〜!?」
「はぁ、実はそうなんです・・・・」
すっかりと御用となってしまった犯人その1と犯人その2。
今やアーダルベルト番長とジュリアから尋問されている身となっていた。
「せっかく売上金が戻ってきても、これじゃあどっちが勝っていたか分からないじゃない」
ジュリアはがっくりと残念そうに俯いた。
「ったく、仕方無ぇな。ジュリア、今回は痛み分けって事で勝負は次の機会に持ち越そうぜ」
「そうするしか無さそうね。本当に残念だわ」
「そうがっかりするな。文化祭も残り時間が僅かなんだし、その分精一杯楽しめばいいじゃねぇか」
「それもそうね」
「でも、文化祭に戻る前に俺達にはまだ一仕事が残ってるけどな」
アーダルベルト番長とジュリアは犯人その1と犯人その2に向き直った。
「あなた達は私達が直々にお縄につけたい所だけど、私達はまだ文化祭の途中なの。警察が来るまで、職員室の先生方の監視下に置いてもらうわよ」
「そういう事だ。お前等は大人しくしている事だな」
そう言ってアーダルベルト番長とジュリアは犯人その1と犯人その2をずるずると連行して行って、事情を説明して職員に引き渡したのだった。
「アーダルベルト、ごちゃ混ぜにされた売上金はどうする気なの?」
「そうだな、盗まれたクラスの奴等に事情を説明して、それぞれ山分けにすしか無ぇだろうな」
「それが1番良いかもしれないわね。はぁ、せっかくアーダルベルトのクラスに勝てると思ったのに」
「どうだかな、俺達のクラスだってジュリアのクラスに引けはとってない様だったぞ?」
アーダルベルト番長とジュリアがそれぞれのクラスに戻る途中、通行人の生徒が番長達に話しかけてきた。
「あっ、メイド番長にジュリアさん。今、メイド喫茶に可愛いメイドさんがいるって本当なのか?」
「可愛いメイド?何の事だ?俺は今戻ったばかりだから、メイド喫茶がどんな状況か知らねぇんだ」
「そっか、俺も今からメイド喫茶に状況を見に行くから入店した時はよろしくな、メイド番長」
番長達に話しかけてきた生徒は一足先にメイド喫茶へと向かった。
「誰の事かしら?まぁ、ヨザックじゃないって事は確かでしょうけどね」
「間違いなくあいつじゃ無いだろう。一体何が起きてるんだ?」
「アーダルベルト、私達も早く戻って状況を確かめるわよ!」
アーダルベルト番長とジュリアも急いで戻って行った。
2人がメイド喫茶へと戻った時、思い掛けない人物がメイドの格好をしていた。
「お・・・お帰りなさいませ、ご主人様///」
「う〜ん、まだ表情がぎこちないわね。ほら坊ちゃん、深呼吸でもしてもっと肩の力を抜くのよ」
「う・・・うん、すーはーすーはー、よしっ!」
何と、アーダルベルト番長が抜けていた代わりにメイドを頑張っていたのは、ジュリアの遠い親戚であるユーリだった。
メイド喫茶に来ている客は、ユーリの姿を見て『可愛いーvv』と絶叫していた。
アーダルベルト番長とジュリアは、本来なら部外者であるユーリがメイドしていた事にかなり驚いた。
「ぼ・・・坊主!?」
「ユーリちゃん!?あなた、何て格好してるの?!そんな可愛い格好していたら悪い虫の餌食よ!」
「あっ、ジュリアさんにアーダルベルト。色々と大変そうだったから俺にも何か手伝えないかと思って・・・・///」
メイドの姿で顔を赤らめて恥ずかしがるユーリは、はっきり言ってかなり可愛い。
そんなユーリの姿をジュリアは(ユーリちゃん・・・凄く可愛いわvv)と思いながら悦に入っていた。
「そうなのよ、ジュリア嬢が楽しみにしていた文化祭をめちゃくちゃにしたく無いって坊ちゃんが言ってくれてね。それで番長の旦那がいない分、坊ちゃんが頑張ってくれたのよ」
「ユーリちゃん、私の為に?」
「はい、ジュリアさんには何かとお世話になってるから、こんな時くらいしかお礼が出来ないって思ったから」
「そうだったの・・・・ありがとう、ユーリちゃん」
ジュリアはユーリに笑顔でお礼を言った。
「良い所に水を刺す様で悪いが、あそこにいるのはコンラッドと坊主の友達じゃないのか?」
アーダルベルト番長がそう言って指を刺した方向へと目を向けると、コンラッドと村田がお互いにドス黒いオーラを発しながら会話していた。
「何で君がここにいるのかなぁ?待たせてる女の子の為に、君は自分の仕事に戻った方が良いんじゃないのかい?」
「ご心配なく、俺は今休憩中ですから。あなたこそここはユーリに任せて、別の所を廻ってきた方が良いんじゃないですか?」
「生憎、渋谷ばかりにここを手伝わせるのは心苦しくてね。僕も列の最後尾に案内する仕事に就いてるんだよ」
アーダルベルト番長は呆れた様に遠くから2人を見ていた。
ジュリアはコンラッドの方へずんずんと進み、コンラッドに話しかけた。
「コンラッド、ここに負けてられないわ。戻って執事喫茶の売り込みに励むわよ!」
「えっ・・・ジュリア!?え〜っと、俺は今休憩中で・・・・」
「も・ど・る・わ・よ?(ニーッコリ)」
「は・・・・はい(汗)」
「じゃあね、村田君。お邪魔しちゃってごめんなさいね」
「いえ、ジュリアさんも頑張ってくださいね?」
ジュリアは名残惜しむコンラッドをずるずると引っ張って、自分のクラスへと戻って行った。
「悪いな、俺達の事で坊主達にも付き合わせちゃって」
「いいよ、別に。メイドは恥ずかしいけど、俺も楽しいし」
「そうか、後は俺達の出番だから坊主達は休め。さぁ、俺達も執事喫茶には負けてらん無ぇぞ!残り時間、精一杯売り込むぞ!」
「ふふっ、やっと旦那の本領発揮ね」
「番長、俺達も頑張ります!」
アーダルベルト番長とジュリアは互いの仕事に戻って、文化祭の残り時間を精一杯満喫したのでした。
後日、写真部の人達にメイド姿やら執事姿をバッチリ写真に治められていて、学校の廊下に張り出されるのであった。
END
とりあえず、これにて文化祭編は終了です(汗)
アーダルベルト番長とジュリアの今後の活躍に、乞うご期待!(←そんな事を言っていいのか?自分!)