初登場!アーダルベルト番長
「番長」、それは選ばれし強き者にこそ得られる称号。
とある町に、立派な筋肉の付いた逞しい肉体を持つマッチョな番長がいた。
その番長は長身で大男の顎が割れた強面で、一見からすると乱暴者の印象を受けて近寄りがたい様に見える。
しかし、実際は曲がった事が大嫌いな一面を持つ大変男前な性格の番長であった。
カツアゲされていた者を救った経験が数回、集団暴力を受けていた者を救った経験が数回、万引きしている者を『馬鹿野郎!!』と言いながら正義の鉄槌で過ちを更正させた
経験が数回etc・・・・
番長でありながら警察などから感謝状が贈られそうだ。
手下達からの信頼も厚く、超の着く程人情深いが敵と認識した者には容赦が無い。
そんな番長を人はこう呼ぶ・・・・・・
「アーダルベルト番長」、と。
「うわっ・・・・・」
ある少年が、自分の不注意で歩道橋の階段から落ちそうになった。
『落ちる・・・!!』
誰もがそう思った。
少年も落ちた時の衝撃を恐れ、目を瞑った。
ドサッ!!
しかし、結構高い段から落ちた割には落ちた時の衝撃も痛みも無かった。
・・・・・あれっ?痛くも何とも無い。
少年は不思議に思った。
恐る恐る目を開けると、ご対面したのは固いコンクリート製の地面では無く、大柄なマッチョ体形で長身の男性だった。
「大丈夫か?坊主」
「え・・・えっと、はいっ、大丈夫です」
どうやら少年が歩道橋から落ちたのを偶然に見かけ、咄嗟に駆け付けて少年の体を受け止めてくれた様だ。
うわぁ〜、凄い筋肉だな。
この人、アメフト選手並みに筋肉が付いてそうだな。
少年は助けてくれた恩人の肉体を、『羨ましいな〜』と思いながら見惚れてしまった。
「どうした?呆けちゃって。何処か怪我でもしたか?」
「いえっ、何でもないです。何方かは存じませんが、おかげで怪我もせず助かりました。ありがとうございます」
「いやっ、礼には及ばん。気にするな」
2人の元に、また新たな男が駆け寄って来た。
「アーダルベルト番長、お怪我は?」
「俺がこの細っこい坊主を受け止めたくらいで怪我なんか負う訳ないだろう、キーナン」
ば・・・・番長?今、この人の事『番長』って言った?
もしかして俺って、とんでもない人に助けてもらちゃった?
ここは『助けたお礼はチップで』と言うのがお約束?
でも、さっき『礼には及ばない』ってこのアーダルベルト番長って人が言ったばかりだし。
少年はぶつぶつと独り言を言っていた。
「あのな、俺は別にお前さんから金をせびろうなんざ考えちゃいないぜ?」
「へっ?何で俺の考えてる事が分かったの!?もしかして、番長と思わせといて、あんたの本当の正体はエスパー?」
「んな訳無いだろう。お前さんの独り言が俺の耳に入っただけだ」
少年の天然発言に苦笑を抑える事が出来ない、アーダルベルト番長とその手下、キーナンであった。
「俺達の番長はそんな事やる訳無いだろう。そですよね?アーダルベルト番長」
「まぁな、何も見返りが欲しくて人助けする程、俺も落ちぶれちゃいないさ」
この人達は本当に良い人みたい。
何か変な誤解しちゃって悪かったな。
「助けてもらったのに、変な誤解しちゃってすいませんでした」
少年は素直に謝罪した。
「別に気にしちゃいねぇよ。それに、坊主みたいな面白い奴は嫌いじゃないしな。そんな事より、また階段から落ちない様に気をつけろよ?」
そう言ってアーダルベルト番長は、少年に背中を向けてキーナンを連れて歩いていった。
「はい、本当にありがとうございました」
「変な奴でしたけど、小柄で綺麗な黒髪の可愛いらしい坊主でしたね」
「あぁ、目もそこら辺の女よりでかくて、つぶらな黒い瞳だったな」
「番長、ひょっとしてあの坊主に惚れちゃいましたか?」
「馬鹿言うな、いくら可愛くてもあいつは男だぞ?それに、俺はどちらかと言うとああいう可憐なタイプより、もう少し刺激的で俺と対等で渡り合える方が好みなんでな」
それで腕っぷしも強ければ言う事無しだ。
「そんな女、この世の何処を探しても存在しませんって」
「まぁな、俺も今まで生きてきた中で、そんな女に出会えた事は1度もねぇよ」
しかし、アーダルベルト番長のその好みに合う女性に運命的な出会いをするのは、この数日後だったりする。
END
やっちまいました・・・遂にやっちまいましたよ。
マチョファンの方々にひたすらごめんなさい(土下座)
あっ、ある少年は皆様のご想像にお任せします(←バレバレ?)
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